第2735冊目 FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学 ジョー・ナヴァロ (著), トニ・シアラ・ポインター (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

  • おわりに


何年も前になるが、私はコンサルティングのクライアントのひとりに個人レッスンをしたことがある。このときの生徒は、ノンバーバル・コミュニケーションを学びノンバーバル・インテリジェンスを応用することについて、こんなふうに言っていた――「人生に関する情報がぎっしりつまった巨大なタンクが隠されていたのを見つけ、その栓を抜くようなものです」。彼は人と状況に完全に同調できるライセンスを手にできることに、大きな自由を感じていた。「ええ、これを信頼し、これを感じ、これといっしょに走ります」と話した彼は、それまでいつも何かに妨げられているように感じていたという。社会的な条件による束縛が、現代の暮らしの猛スピードとあいまって、人々を抑えつけられているのだろう。それでは私たちが生まれながらにもっている世界と深くつながれる能力を使えず、知っているもの、取り組むべきものの多くを、無視しなければならなくなる。成功している人は、まさにその逆を行っているように見える。


私は専門職についている若者に、いつもこう尋ねる。「自分が上司になったと考えてください。どんな人を雇い、昇進させますか? 頼りなくてだらしない人、まったく理解力がないように見える人を、雇いますか? あるいは、懸命に働き、鋭く、問題を予見しているように見え、会社を適切に代表する人を選びますか?」。もちろん回答は明快だ。そこで、さらに質問を続ける。「これらのものを、どうやって身につけますか?」。考えが止まるのはたいていここだ。一部で言われているように、ただ成功を目指す服装をし、きちんと整理整頓し、有名大学の学位を得て、専門技能を手にするだけのことでない。頭がよくても仕事で成功しないたち、証明書をたくさんもっていてもどここにも就職できない人たちは、どこにでもたくさんいる。その逆に、手にしているつもりも出身もごくふつうなのに、みんなから喜んで力を貸してもらえる人たちもいる。そういう人たちの努力は、どんなことがあっても必ず実る。まさに「よい」から「並外れた」へと進んでできた人たちだ。


成功した人々に共通して目立つのは、どのような分野であっても、成功するように行動し、振る舞っていることだ。彼らは成功のノンバーバルによって生きているからこそ、際立っている。まわりの世界を鋭い目で観察し、人の心を正確に読み取り、ほかの人より先の物事を認識する。また、自らもノンバーバルに情報を発信していることをはっきりと自覚し、それを自らの利点として利用している。ほかの人が気付かない機会を簡易、見ることができるから、驚くことはほとんどない。彼らはまさにアリストテレスの偉大な警句を体現している――われわれは、繰り返し行うことで作られる。したがって、優秀さとは行動ではなく、習慣である」。


これらの人々が際立っているのは、どんなことで努力しているにせよ、その態度、能力、行動の迅速さ、振る舞い、判断力、自信から伝わってくるものがあるからだ。彼らは常に成功のシグナルを発信している。信頼するに値し、私たちはそこに全幅の信頼を寄せる。誰かが「私を信頼してください」と口で言っても、信頼に足りることを実践している人に比べ、その言葉はむなしく響く。だからノンバーバル・コミュニケーションには――ほとんどの人が考えているよりずっと大きな――注意を払わなければならない。本当の信頼を生むのは私たちの言葉ではなく、振る舞いをとおして伝えている信頼性なのだから。私たちがどのように自分自身とまわりの人々に対応するかが、明らかに成功を左右する。