第2632冊目 プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)


  • 汝の時間を知れ


時間を記録して分析し、仕事を整理するならば、重要な仕事に割ける時間を把握できる。真の貢献をもたらす大きな仕事に利用できる自由な時間は、実際にはどのくらい残るか。実は、時間浪費の原因となっているものを容赦なく切り捨てていっても、自由に使える大きな時間はさほど多くない。


地位が上がるほおd、管理のしようながない時間、しかも、いかなる貢献ももたらさない時間の割合は多くなる。組織が大きくなるほど、組織を機能させ生産的にするための時間ではなく、単に組織を維持し運営するための時間が多くなる。


成果をあげるためには、自由に使える時間を大きくまとめる必要がある。大きくまとまった時間が必要なこと、小さな時間は役に立たないことを認識しなければならない。たとえ一日の時間の四分の一であっても、まとまった時間であれば、重要なことをするには十分である。逆に、たとえ一日の四分の三であっても、その多くが細切れではあまり役に立たない。したがって時間管理の最終段階は、時間の記録と仕事の整理によってもたらされる自由な時間をまとめることである。


時間をまとめるには、いろいろな方法がある。ある人たち、なかでも年配の人たちは、週に一日は家で仕事をしている。これは研究者がよく使う方法である。またある人たちは、会議や打ち合わせなど日常の仕事を、週に二日、たとえば月曜と金曜に集め、ほかの日、特に午前中は、重要な問題について集中的かつ継続的な検討に当てている。


しかし、時間をまとめるための具体的な方法よりも、時間の管理に対するアプローチの仕方のほうがはるかに重要である。


ほとんどの人たちは、二次的な仕事を後回しにすることによって自由な時間をつくろうとする。そのようなアプローチの仕方では、たいしたことはできない。心の中で、また実際のスケジュール調整の中で、重要でない貢献度の低い仕事に、依然として優先権を与えてしまう。時間に対する新しい要求が出てくると、自由な時間や、そこでしようとしていた仕事のほうを犠牲にしてしまう。数日あるいは数週間後には、新しい危機や些事に食い荒らされて、せっかくの自由にできる時間は霧消している。


時間の管理は継続的に行わなければならない。継続的に時間の記録をとり、定期的に仕事の整理をしなければならない。そして、自由にできる時間の量を考え、重要な仕事についは、締め切りを自ら設定しなければならない。


大きな成果をあげている人は、緊急かつ重要な仕事ととに、気の進まない仕事についても、締め切りを設けたリストを作っている。それらの締め切り日に遅れ始めると、自由にできる時間が再び奪われつつあることを知る。


時間は稀少な資源である。時間を管理できなければ、何も管理できない。そのうえ、時間の分析は、自らの仕事を分析し、その仕事の中で何が本当に重要かを考えるうえでも、体系的かつ容易な方法で、ある。汝自身を知れとのむかしからの知恵ある処方は、悲しい性の人間にとっては、不可能なほどにむずかしい。しかしその気があれば、汝の時間を知れとの命題には、誰でも従えるはずである。その結果、誰でも成果と貢献への道を歩める。