第2631冊目 プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)


  • 仕事を整理する


時間の使い方は、練習によって改善できる。だが、たえず努力をしないかぎり、仕事に流される。時間の記録は次に来る一歩は、体系的な時間の管理である。時間を浪費する非生産的な活動を見つけ、排除していくことである。そのためには、時間の使い方についての自己診断のために、いくつかの問いかけを自らに対して行っていく必要がある。


第一に、する必要のまったくない仕事、すなわち、いかなる成果も生まない完全な時間の浪費であるような仕事を見つけ、捨てなければならない。そのような浪費を見つけるには、時間の記録に出てくるすべての仕事について、「まったくしなかったならば、何が起こるか」を考えればよい。「何も起こらない」が答えであるならば、明らかに結論は、その仕事をただちにやめよということになる。


やめても問題のないことをいかに多くしているかは驚くほどである。楽しみでも、得意でもなく、しかも古代エジプトの洪水のように毎年堪え忍んでいる行事、スピーチ、夕食会、委員会、役員会が山ほどある。ここでなすべきことは、自らの組織、自分自身、あるいは貢献すべきほかの組織に何ら貢献しない仕事に対しては、ノーということである。


毎晩会食していた社長がそれらの会食を分析したところ、三分の一以上は、会社から誰も出席しなくても構わないことがわかった。遺憾ながら、招待のいくつかは、参席がそれほど歓迎されていないことさえ分かった。招待は礼儀にしぎなかった。欠席するものと思われており、参席することによって、かえって困惑を招いていた。


地位や仕事を問わず、時間を要する手紙や書類の四分の一は、くず籠に放り込んでも気づかれもしない。そうでない人にお目にかかったことがない。


第二に「他の人間でもやれることが何か」を考えなければならない。


毎晩会食していた社長は、さらに三分の一はほかの幹部に任されることを知った。参席者の名簿に会社の名前が出ていればよかった。


通常使われている意味での権限委譲は間違いであって、人を誤らせる。しかし、自らが行うべき仕事を委譲するのではなく、まさに自らが行うべき仕事に取り組むために、人にできることを任せるとは、成果をあげるうえで必要なことである。