第2588冊目 一瞬で自分を変える法  アンソニー・ロビンズ (著), 本田 健 (翻訳)


一瞬で自分を変える法 (知的生きかた文庫)

一瞬で自分を変える法 (知的生きかた文庫)

  • 肉体は庭、意志は庭師


消極的な精神状態や感情が文字どおり人を死に至らしめるということは誰でもよく知っているが、前向きな精神状態が人を癒すということについては、あまり語られていないように思う。


前向きな心が持つ有益な面を取り上げた例で、もっともよく知れれているのは、前にも書いたノーマン・カズンズの「笑いと治療力」だろう。この中でカズンズは、笑いの力によって長年苦しめられた病から奇跡的な回復を遂げた経緯を述べている。


笑いは、「生きたい」という意志を活性化するためのツールの一つである。


カズンズは一日の大半を映画やテレビ、本を見て、笑うことに治療の大部分を費やした。


その結果、頭の中に思い描くイメージが変化し、笑いによって生理状態も劇的に変化した。それに続いて、肉体的な変化も起こってきたのである。よく眠れるようになり、痛みも軽減され、身体全体の調子が良くなっていた。


当初、医者の一人は、カズンズが回復する可能性は五百分の一だと言っていたにもかかわらず、最終的に、彼は完全に病気から解放された。カズンズは最後にこう言っている。


「たとえば回復の見込みはほとんどなくても、人間の心と身体の再生力を決して軽視してはいけないことを、私も身をもって学んだ。生命の持つ力は、解明されていないことが多い」


人間は気分のいい時に微笑み、楽しい時に笑うわけではない。むしろ、微笑みや笑いは、気分を良くするためのスイッチだという。笑いによって脳への血流が増え、酸素がたっぷり補給されること気分も良くなるのだ。


表情も効果的である。たとえば、恐怖、嫌悪、驚きを示す表情をつくると、それに伴って感情が変化してくるのである。


顔には八十の筋肉があり、止血帯のような働きをしている。身体に大きな変化が起きた時は、血流を安定させたり、脳に血流を供給して、その働きを助けたりする。


カリフォルニア大学の精神医学の教授、ポール・エクマン博士は、「ロサンゼルス・タイムズ」紙でこう述べている。


「自分の中で何らかの感情が湧くと、顔に表れるものです。ところが、逆もまた真なりで、意識的に表情をつくると……たとえば、つらくても笑っていると、心の中ではそれほど苦しまずにすみますし、悲しげな顔をしていると、心まで悲しくなってくるのです」


さらに、同じ原理で、嘘発見器をだますこともできるという、真実を言っている時と同じ生理状態をつくれば、たとえ嘘をついたとしても嘘発見器は本当だと判明する。