第2171冊目 ユマニチュード入門 本田 美和子 (著), ロゼット マレスコッティ (著), イヴ ジネスト (著)
- 作者: 本田美和子,ロゼットマレスコッティ,イヴジネスト
- 出版社/メーカー: 医学書院
- 発売日: 2014/06/09
- メディア: 単行本
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- 職業人として「見る」ということ
職業人として、ケアを受ける人を「見る」ことについて、具体的な場面を想定して考えてみましょう。
- ベッドに近づく。
- ケアする側を選ぶ。
- いすに座っている人に近づく。
- 立っている人に近づく。
- 食事を介助する。
このような場面において、あなたは、相手が自分とアイコンタクトをとりやすい角度をあらかじめ探して、意識的に視線をつかまえるような近づき方をしているでしょうか。
たとえばベッドに近づくとき、ケアを受ける人の顔がどちらを向いているか確認していますか? 多くの人は、たとえ顔が部屋の扉と反対側を向いていても、扉のほうから近づいていると思います。
認知機能が低下している場合には、外部からの情報を受け取れる範囲が狭くなっています。情報の入口としての視野のも狭くなっている可能性があります。
その結果、ケアをする人が近づいていることに気づかず、不意をつかれて驚いてしまうのです。ケアを受ける人にとっては唐突に何かが現れたと感じられ、驚いて叫んだり、暴力を振るったりすることがあるかもしれません。しかし、これはケアをする人への攻撃ではなく、いきなり自分のまわりで起こった出来事に驚いて、自分を守ろうとしている防御なのです。
このような事態を防ぐために、ケアをする人は、ケアを受ける人の正面から近づき、その視線をつかみに行くことが重要です。ただ相手の目を見るだけではなく、視線をつかみに行き、つかみ続けるのです。意識して相手の視界の中に入るような動線を描きながら近づき、常に相手の視線をとらえるよう顔を動かします。