第3233冊目 家族のためのユマニチュード: “その人らしさ”を取り戻す、優しい認知症ケア  イヴ・ジネスト (著), ロゼット・マレスコッティ (著), 本田 美和子 (著)


家族のためのユマニチュード: “その人らしさ

家族のためのユマニチュード: “その人らしさ"を取り戻す、優しい認知症ケア

  • 相手に見てもらえるように、思いきって近づく


しかし、認知の機能が低下している人はそうではありません。かなり近づかないと、自分に何か用事がある人なのだとわかってもらえません。互いに20センチくらいの距離まで近づいても、もっと顔を寄せてくることすらあります。ここで大切なのは、適切な距離は「ケアを受ける人が決める」ということです。相手が後ずさったり、のけぞったりすれば、それは近づきすぎです。適切な距離は、同じ人であっても状況によって変わってきます。コミュニケーションの第一歩として、見るための距離を常に測りながら近づいてみてください。


また、長く見ることは行為を示す表現である一方で、無言でじっと見つめられると暴力的に感じます。そのため、相手と目が合ったな、と感じたらおよそ2秒以内に話しかけます。同時に複数のコミュニケーションの柱を使う、つまりこの場合は「見ながら、話す」ことをマルチモーダル・コミュニケーションと呼びます。


思いきって近づいても、相手の目を見ることが恥ずかしかったり、無理だと思うときには、相手の視線をつかみにって、相手の目の中に映る自分を見つけてみてください。多くの場合、アイコンタクトをとることがそれほど難しいとは感じなくなっていきます。


相手の視界の中心に入るよう、自分の位置を考えることも大切になります。腰が曲がっていつも地面を見ているような方の場合には、下からのぞくようにして視界に入り込むことも必要です。