第1285冊目 すごい説得力: 論理的に考え、わかりやすく伝える話し方 (知的生きかた文庫) [文庫] 太田 龍樹 (著)



何気ないけど効果絶大な「手の動き」


ジェスチャーすることの大切さを述べてきましたが、そもそもどのように手の動かせばいいのか、と疑問に思われた方もいるでしょう。


「イラストレイター」という用語があります。


これは、「説得的行動」や「例示的しぐさ」という意味です。


単語を補う非言語的行動であり、話の内容を「描写的に」表す役割を果たします。


たとえば、「雨がしたたり落ちる」というとき、手のひらを天に向け、上下に動かすようなしぐさがそれに当たります。


グレアムとアーガイルという学者は、二次元的図形についての情報を、被験者に手のしぐさを交えて伝える、手を使わずに伝える、という実験を行いました。その結果、言葉だけでなく、イラストレイターを交えて説明したほうが、聞き手が正しくその図形を理解できることがわかりました。


このように、手の動きには、相手のより深い理解を促進する効果があるのです。


そこで、効果的と思われる手の動かし方のポイントを4つ紹介しましょう。


①手を差し伸べる
相手に呼びかける際に、「手を差し伸べて」みましょう。まるで握手しているかのように見せることで、友好のジェスチャーとなります。人は、握手に対し、好意的な反応を示すものです。


しかし、相手を人差し指でさしてはいけません。そういう場合は、手のひらをほぼ上向きにし、すべての指をまっすぐに伸ばして、腕を差し出すようにします。こうすると、相手のリアクションが違ってくるはずです。


ビジネスシーンでは、手のひらのような何かの裏側にあるものを、あまり見ることがありません。ですので心を開いている証として、相手は好意的に反応してくれるのです。


私も話すときは相手を指ささないように注意しています。多くの人は指をさされるのと威圧的な印象を持ちます。だからこそ、人は手を差し伸べる行為に対し、本能的に、感情的に、好意を感じるのです。


②今話していることを手で表現する
たとえば、


「マーケットが拡大しています」


というときには、両手を広げてみましょう。


「売上げが前年比で3倍になりました」


というのなら、手を上にあげてそのインパクトを表現してみましょう。


「経費削減しましょう」


というのなら、手で抑えるような仕草をしてみましょう。


このように、今話している内容を手で表現することで、より説得力を増すことができます。聞き手からどのように見えるかが大事なので、鏡の前で自分の動きを確認したり、仲間に確認してもらったりと、事前準備が必要です。


③関係のない動作はしない
ボールペンをカチカチとノックしたり、回してみたり、もみ手をしたりするなど、


話の主題とは関係のない動作は慎むべきです。


こうした動作は一種のクセなので、周りの人に指摘してもらうことで、自覚することがまず大事です。


動作をつける必要がないときは、手は自然な形でアーチを組むように心がけておけばよいでしょう。


④ハンドアップダウン
手を上から下に、力強く動かすと、情熱的に見えるものです。まさに話のアクセントのようなもので、話の内容に力がみなぎる効果があります。


ケネディクリントンオバマなどアメリカ大統領のスピーチを見ると、あなたもこの効果を体感できます。


たとえば、ケネディは手を上から下に動かすチョップのような動作、クリントンはこぶしを打ち下ろすハンマーのような動作を多用していました。あなたも、自分なりのチョップやハンマーを編み出してください。