第1201冊目  すごい説得力: 論理的に考え、わかりやすく伝える話し方 (知的生きかた文庫) [文庫] 太田 龍樹 (著)



「一貫性」があなたの説得力を上げる


人を説得するときに最も大事なこと。


それは「一貫性」です。話が二転三転しては、相手を説得できません。


「我が社は来年度、新卒をどんどん採用します」といっておきながら、次の日になって、「やはり我が社は来年度の人件費を圧縮する方向で考えていきます」ということは、よくあるものです。


では、話に一貫性を持たせるためには、どうすればいいのでしょうか?


たとえば、


「社員の高齢化(平均年齢40代後半)が進んでいる」


「景気が悪いため、今年は、買い控え傾向が目立つが、それは一時的である」


「扱っている商品のターゲット層は、20代後半から40代前半に至る世代」


……というように、一つひとつの事実を拾い出し、そこから「一言でいえば」という主張や考え――解決策を導き出すのです。


その結果、「当社は、市場に対して拡大・成長のための先行投資を進める」というような軸ができれば、この軸はディベートでいう「哲学」となります。そして、その「哲学」に基づいて、「当社は、積極的に新卒採用をしていく」というような具体的プランが導き出されるのです。


「哲学」」とは、「基本的スタンス」であり、「拠って立つ所」という意味であり、さまざまな具体的事象(事実)をひとまとめにした理念のことです。たとえていえば、「扇の要」のようなものです。


それでは、「哲学」をつくるための、手順をご紹介いします。


①徹底的な情報収集
②その情報(具体的事象)を「一言(抽象語)」で表現してみる
③最後に、その「一言」が情報を包み込んでいるか再チェックしてみる


以上、3つのステップを踏んで、大きな哲学(軸)を構築してください。


3ステップに基づいて、具体的にご紹介しましょう。


たとえば、私のようなコンサルティング営業をしているなら、徹底的にお客様にヒアリングをします。


①収集すべき情報は、まずお客様ご自身の現状(経済的状況や家庭状況など)や価値観(定年まで今の仕事をまっとうしたいとか、いつかは独立したいなど)になります。次に、プロとして世の中の動向を判断しなければならないので、新聞や業界紙から経済状況を把握したり、厚生労働省などから出ている医療や年金にまつわる統計・データをしっかり情報収集します。


②収集した情報をもとにお客様を取り巻く環境を「国の財政や企業の将来を考えると、将来の年金制度は危うい。必ず年金不安は強まる。老後のお金は国に頼れない(自己責任)と結論を出します。その際、お客様に対する「一言」を「自己責任」という抽象語でくくってみるのです。


③その一言だ「自己責任」という言葉を世の中の動向にズレがないか、もう一度、自分が収集した情報に照らし合わせてチェックします。


以上が「哲学」のつくり方です。そして、お客様に、


「お客様を取り巻く状況は、年金不安――いいかえれば将来不安といってもよいかもしれません。そこで大事になるのは、ただ1つ。「自己責任」です。自分で自分を守らないといけません。自己防衛です。この商品は、お客様の自己防衛を強力に担保してくれます」


と伝えることが、このケースでの「哲学」という名の基本的スタンスとなります。


あなたの哲学にブレが出ないためにも、相手の想いや不安、そして世の中のさまざまな情報を引き出してください。次にそれらを一言でくくり、大きな幹のような一貫性を持って、相手を説得してください。