第908冊目  「分かりやすい説明」の技術 最強のプレゼンテーション15のルール (ブルーバックス) [新書]藤沢 晃治 (著)

音読の勧め

つまり説明上手になるには、本書で述べた十五のルールを、確実に記憶に定着されることだけで十分に効果があります。

記憶に定着させる秘訣は、反復です。新しい英単語を覚えようとするとき、二、三回声に出して読んだだけでは、翌日になれば忘れてしまいます。しかし、繰り返し書いたり読んだりしていれば、やがて記憶が定着します。

とは言っても、本書を始めから終わりまで、何度も読み返すほど暇な人はいないでしょう。そこで、お勧めするのが、この第4章でまとめた十五のルールを音読することです。一日一回、この十五のルールをゆっくり音読し、それを一〇日間だけ続けていただきたいのです。

音読するなどとバカバカしく聞こえるかもしれません。しかし、一〇日間の音読後、それから数日後か数週間後、あるいは何ヵ月後かのある日、あなたが何らかの説明をしなければらない状況に立たされた時、ここで定着させたいくつかの説明術のルールが、必ず脳裏をよぎるでしょう。その時、あなたの説明の達人という新しい自分に出会うはずです。

小学生の時、かけ算の九九を、ほんの三週間ばかり声に出して反復練習したことを思い出してください。たった三週間の時間投資で、算数の基礎知識としての九九が、しっかりとあなたの生涯の財産となったではありませんか。説明術も同じです。ほんの一〇日間の時間投資で永遠にあなたのものとなります。さあ、恥ずかしがらずに音読を始めてみましょう。

①タイムラグの存在を知れ。

  • 聞き手が脳内整理棚を準備中はゆっくり話すなどして待て。
  • 聞き手が脳内整理棚をがいつ準備完了するかに注視せよ。
  • 聞き手の脳内整理棚の準備が完了してから情報を送れ。

②タイムラグを短縮せよ。

  • 概要を先に与えよ。
  • 聞き手の脳内整理棚選定作業を詳細情報で妨害するな。

③「間」を置きながら、しみ入るように話せ。

  • 意味別の区切りごとに小休止を取れ。
  • キーポイントを話した直後に小休止を取れ。
  • 複雑な概念を話す時は小休止を多用せよ。

④具体性と抽象性のバランスを取れ。

  • 意識して範囲指定せよ。
  • 範囲を推測させる具体例を挙げよ。
  • 大分類名ではなく、小分類名で語れ。
  • 全体説明と部分説明との間を適宜、行き来せよ。

⑤説明もれに気づけ。

  • 三者に事例チェックしてもらえ。
  • 聞き手の立場を想像せよ。

⑥情報構造を浮かび上がらせよ。

  • 重複、ムダを整理せよ。
  • 大項目、小項目の関係を明示せよ。
  • 対比関係、同例関係を明示せよ。
  • キーポイントを添えよ。

⑦キーワードを使え。
⑧論理的な主張をせよ。

  • 主張の裏付けを用意せよ。
  • 承認ずみの主張は「新しい裏付け」として再利用せよ。
  • 分かりやすさの障害となる非論理的な弱点部分は隠せ。

⑨聞き手が知っている事例にたとえよ。

  • 格言、ことわざを普段から仕入れよ。

⑩聞き手の注意を操作せよ。

  • 要点を話す前に「問いかけ」を注視させよ。
  • 「まとめ言葉」で聞き手の整理を助けよ。

⑪聞き手を引率せよ。

  • 常に聞き手に展望を与えよ。
  • 聞き手が落伍していないか気配りせよ。

⑫繰り返しの劣化に注意せよ。

  • 聞き返されたら要注意。
  • 聞き手は「今日、初めて聞く」ことを忘れるな。
  • 「伝える」気持ちを取り戻せ。

⑬持ち時間を守れ。

  • 要約力をみがけ。
  • 説明内容の要点を大、中、小の見出しに整理しておけ。

⑭聞き手に合う説明をせよ

  • 聞き手の持っている前提知識を知ってから説明せよ。
  • 説明内容を事前に正しく知らせよ。
  • 聞き手に、必要な前提知識を事前に正しく示せ。

⑤聞き手を逃すな。

  • 聞き手の不快感を解消せよ。