第980冊目  「分かりやすい説明」の技術 最強のプレゼンテーション15のルール (ブルーバックス) [新書]藤沢 晃治 (著)

音読の勧め


つまり説明上手になるには、本書で述べた15のルールを、確実に記憶に定着させることだけで十分に効果があります。

記憶に定着させる秘訣は、反復です。新しい英単語を覚えようとするとき、2、3回声に出して読んだだけでは、翌日になれば忘れてしまいます。しかし、繰り返し書いたり読んだりしていれば、やがて記憶が定着します。

とは言っても、本書を始めから終わりまで、何度も読み返すほど暇な人はいないでしょう。そこで、お勧めするのが、この第4章でまとめた15のルールを音読することです。1日1回、この15のルールをゆっくり音読し、それを10日間だけ続けていただきたいのです。

音読するなどとはバカバカしく聞こえるかもしれません。しかし、10日間の音読後、それから数日間か数週間、あるいは何ヵ月か後かのある日、あなたが何らかの説明をしなければならない状況に立たされた時、ここで定着させたいくつかの説明術のルールが、必ず脳裏をよぎるでしょう。その時、あなたは説明の達人という新しい自分に出会うはずです。

小学生の時、かけ算の九九を、ほんの3週間ばかり声に出して反復練習したことを思い出してください。たった3週間の時間投資で、算数の基礎知識としての九九が、しっかりとあなたの生涯の財産となったではありませんか。説明術も同じです。ほんの10日間の時間投資で永遠にあなたのものとなります。さあ、恥ずかしがらずに音読を始めてみましょう。




①タイムラグの存在を知れ。

聞き手が脳内整理棚を準備中はゆっくり話すなどして待て。
聞き手が脳内整理棚をがいつ準備完了するかに注視せよ。
聞き手の脳内整理棚の準備が完了してから情報を送れ。

②タイムラグを短縮せよ。

概要を先に与えよ。
聞き手の脳内整理棚選定作業を詳細情報で妨害するな。

③「間」を置きながら、しみ入るように話せ。

意味別の区切りごとに小休止を取れ。
キーポイントを話した直後に小休止を取れ。
複雑な概念を話す時は小休止を多用せよ。

④具体性と抽象性のバランスを取れ。

意識して範囲指定せよ。
範囲を推測させる具体例を挙げよ。
大分類名ではなく、小分類名で語れ。
全体説明と部分説明との間を適宜、行き来せよ。

⑤説明もれに気づけ。

三者に事例チェックしてもらえ。
聞き手の立場を想像せよ。

⑥情報構造を浮かび上がらせよ。

重複、ムダを整理せよ。
大項目、小項目の関係を明示せよ。
対比関係、同例関係を明示せよ。
キーポイントを添えよ。

⑦キーワードを使え。

⑧論理的な主張をせよ。

主張の裏付けを用意せよ。
承認ずみの主張は「新しい裏付け」として再利用せよ。
分かりやすさの障害となる非論理的な弱点部分は隠せ。

⑨聞き手が知っている事例にたとえよ。

格言、ことわざを普段から仕入れよ。

⑩聞き手の注意を操作せよ。

要点を話す前に「問いかけ」を注視させよ。
「まとめ言葉」で聞き手の整理を助けよ。

⑪聞き手を引率せよ。

常に聞き手に展望を与えよ。
聞き手が落伍していないか気配りせよ。

⑫繰り返しの劣化に注意せよ。

聞き返されたら要注意。
聞き手は「今日、初めて聞く」ことを忘れるな。
「伝える」気持ちを取り戻せ。

⑬持ち時間を守れ。

要約力をみがけ。
説明内容の要点を大、中、小の見出しに整理しておけ。

⑭聞き手に合う説明をせよ

聞き手の持っている前提知識を知ってから説明せよ。
説明内容を事前に正しく知らせよ。
聞き手に、必要な前提知識を事前に正しく示せ。

⑤聞き手を逃すな。

聞き手の不快感を解消せよ。