第512冊目 即戦力の人心術 部下を持つすべての人に役立つ マイケル・アブラショフ/著 吉越浩一郎/訳・解説

即戦力の人心術―部下を持つすべての人に役立つ

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マニュアルはすぐ腐る
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当時、まだ若かった私は、ペルシャ湾で任務にあたっていた。この艦の指揮艦は、お高くまとまった外交官の息子で、その下で働くのは大変だった。だが、私は今取り組んでいる任務に習熟しようと最善を尽くしていた。


そこで私はついに実戦の機会に遭遇したのである。


その運命の日の早朝4時30分、艦内に突然、総員配置警報が鳴り響いた。ベットから飛び出し、眠い目をこすりながら自分の持ち場に駆けていってレーダースクリーンを覗くと、21機のジェット戦闘機がこちらに向かっているではないか。


まず頭をよぎった言葉は、「なんてこった!」だった。そして「遺書は書いてあるし、生命保険料も支払っているという言葉がそのあとに続いた。


さらに驚くべきことは、次に起こった。なと近くにきていた指揮官が、私に、「どうすればいい?」と尋ねたのである!


私はまったく信じられない思いで相手を見た。私のその指揮官の指示で動くのだから、それはこっちセリフだ。


私は深く息をつき、ジェット機は約190キロメートル先にいて、われわれのミサイルは最大射程距離は約185キロメートルであると告げた。命中精度も考えると、ジェット機が130キロメートルにまで近づいた時点で発射するべきだと考えた。だが、1つだけ大きな問題があった。


われわれは、そのジェット機の正体を把握していなかったのである。しかし、イラク方面から近づいてきており、その地域に同盟国はなかったので、敵であるとみなすしかなかった。


その後の数分間は、緊迫したというだけではとても済まない時間だった。ジェット機はますます近づいてくる。131キロメートルにまで接近したとき、まさに私はミサイルの一斉発射を行なう準備をしていた。するとジェット機は右に急旋回し、離れていったのである。


私の安堵の溜息は、遠く離れた機関室まで聞こえたのではないだろうか。数時間後、海軍の情報部が、あのジェット機はやはり逃亡中のイラク空軍であったことを知らせてきた。


それから数週間、われわれは不安なときを過ごした。われわれの他に、アメリカや同盟国の部隊はほとんどいなかったのだ。


やがて、援軍が到着し始め、最終的にアメリカはイラクに対して勝利を収める。


だが当初、戦闘能力を持っていたのはわれわれたけだった。もし、あるままジェット機が近づいてきて、交戦していたら、今考えても背筋が凍りつく、いかにわれわれは戦闘の準備ができていなかったかということを、深く考えされられた。


その原因はどこにあったのか。本来求められている戦闘への準備をおろそかにし、義務的に訪ねてくる軍トップの応対に、あまりにも多くの時間と精力を費やしすぎていたことだ。


私はそのとき、もし艦の指揮官になる機会を得ることになったら、仕事の優先順位を間違ってはならないと自らに誓った。しかるべき戦闘能力がなければ、部下たちが命を落としかねない以上、それを最優先にしよう。


あなたにすべてのよきことが雪崩ごとく起きますように♪



今日の名言


なによりも大切なのは、ユダヤ人がしたように、たえず念頭から今勉強中のものを消させないことです。昼でも夜でも、飯を食っているときでも、風呂に入っているときでも、勉強内容を「思い出そう、思い出そう」と心がけていることです。――濱野成秋


今日の感想


こんにちは、ソンリッサです。


本日の一冊は、アメリカ海軍史上随一と言われた手腕をふるい、短期間で数々の大成果を上げた元海軍大佐アブラショフ・マイケルさんによる一冊。


著者は機能不全に陥っていた戦艦ベンフォルドの艦長に着任すると、同鑑が抱えていたさまざまな人的・組織的問題を解決し、“海軍No.1”と呼ばれるまでに大変革。


管理職のかたはもちろん、新入社員のかたにも読んでいたいただきたい一冊です。


目次


1章 問題点を突きとめる「するどい目」
2章 部下を迷わせない、確たる「一貫性」
3章 「やる気」を巧みに引き出す法
4章 明確な「使命」を共有させよ
5章 チームで「負け組」を出さない!
6章 なぜ「この結果か」をよく考える
7章 「合理的なリスク」は恐れるな!
8章 「いつものやり方」を捨てろ
9章 あなたはまだ、部下をほめ足りない!
10章 「頭を使って遊べる」人材を育てよ
11章 永遠に語り継がれる「最強のリーダー」


即戦力の人心術―部下を持つすべての人に役立つ

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