第3893冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田 則夫 (著)

 

現場を牛耳るベテラン部下

 

この手の職員は、現場を思い通りに動かし、部署外(チーム外)の誰も口を挟めない状況を作りあげてしまうとう特徴がある。現場を牛耳るベテラン職員の力は極めて強大で、ともに働く職員はベテラン職員の支配下に入るか、職場を去るかの二社択一の状態に追い込まれる。職場に残る選択をした者はすべて支配下に置かれるようになる。

 

一度、現場を牛耳られ、“鉄の軍団”ができてしまうと、実権を奪い返すのは容易ではない。奪い返そうという姿勢をみせるだけで、猛反撃をしかけてくるからだ。もし、あなたが実権を奪い返そうとするのであれば、奪還するまで、チャレンジし続けるという強い覚悟が必要だ。あきらめて退却してしまうと、次回のチャレンジは極めて困難になる。首謀者は自信を深めるし、「軍団」のメンバーの手下となった職員集団の結束がより一層強くなる。その部署は彼らのやりたい放題となる。いつ、クレームが出てもおかしくないほど、低レベルの業務状況となる。

 

では、どうやって、事態の改善を目指すのか。方法はただ一つ。勝手なことができない環境を作りあげていくことだ。そのためには、施設長、中間管理職、主任などのリーダー職員間の結束が必要となる。“鉄の軍団”に対抗した、“リーダー職員チーム”を作りあげる。

 

続いて、組織が進むべき方向、守るべきルールを再確認する。特に大切なのは、基本的な接遇に関するルールの点検とバージョンアップ。やりたい放題の、“鉄の軍団”は接遇レベルが地に落ちているケースが極めて多い。自分たちのなかで作りあげた、勝手なルールや誤った価値観で業務をこなしている。

 

その部分を突き、改善を余儀なくさせるために、明確な遵守すべきルールを作りあげる。できあがり次第、全部署に業務命令とう形で伝える。通達後、一か月経ったところで、全職員に自己評価をしてもらい、報告書を提出するよう指示を出す。

 

そのうえで、職員と面談。自己評価では「できている」としているのに、できていないところがある場合は、リーダー職員である自分の見解は違うことを伝える。基準を明確にすると、納得してもらいやすくなる。軍団の首謀者であるベテラン職員は、徹底抗戦の姿勢をみせるかもしれない。その場合は、軍団の分断に集中する。軍団に下っている職員であっても、管理監督職員が一対一で話し合っていれば、「このままではいけない」という方向に導きやすくなる。一人ずつ順番に考えをあたらめ、軍団を去るよう促していけば、首謀者の求心力は低下する。

 

最も重要なのは、現場を牛耳るベテラン職員を支える軍団メンバーを減らしていくこと。仲間がいなくなれば、傍若無人な行動は示せなくなる。時間はかかるかもしれないが、「あきらめない」「挫けない」を合言葉に、チャレンジしていくことが期待されているのある。