第3337冊目 「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)  ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)


人間のとる行動の多くは、見ようによってはどうとでもとれるものである。変人を前にして「変わった人が天才だ」と思うか、「社会的適応能力が欠如したダメ人間だ」と思うかは、見方次第だ。相手の行動をどう解釈するかは、観察以前の期待や予想であらかた決まってしまう。これは、見たいものを見るという二元の性癖のためである。たとえば地位の高い人と対談をしたり講演を聴いたりした場合、「やっぱり威厳がある」とか「オーラを放っていた」といった印象を持ちやすい。こうして印象や評判は持続し、ますます強化される。したがって最初の段階で好ましい印象や評判を獲得することは、影響力や権力を手にする第一歩と言えよう。


第一印象が瞬時に形成され、かつ長続きすることは、キャリア形成にとって二つの重要な意味を持つ。第一に、理由はともかくすでにあなたの立場が悪く、周囲の人があなたに悪印象を持っているような場合には、早々に見切りをつけて新天地を開拓する方がよい。これが厳しい助言だということは重々承知している。多くの人は、誠心誠意を尽くせば周囲の見方も変わってくると信じたいだろう。一生懸命働けば悪評も返上できると思いたいだろう。だが残念ながら、そうした努力はめったに実を結ばない。いま挙げたさまざまな理由から、努力に見合う成果はまずもって得られないと考えるべきだろう。あなたの能力や長所は、マイナスの条件のない新しい環境で発揮する方がよい。


第二に、第一印象はさまざまな要素が絡まり合って瞬時に形成され、しかもその中には相手とあなたとの共通性といったコントロール不能の要素も多く混じっている。この点を踏まえ、できるだけ多様な環境で評判を獲得しておくことが望ましい。つまり、大数の法則を効かせるわけである。あなたが何かに秀でていたら、長い間にはさまざまな場面でその能力が発揮され、高い評価を得られるだろう。とは言え、ある一つの場面における評価は偶然性に左右される。だから、ある場面で評価されてもそれに安住せず、別の場面でも積極的に能力を発揮し、評判を確実にする努力をすべきである。これは、ネットワーク作りではできるだけ多様な人と弱い結びつきを形成するのが望ましいことと、ある意味で共通すると言えよう。