第3335冊目 「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)  ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


  • 第一印象を与えるチャンスは一度しかない


世間があなたをどう認識しどう判断するかは世の中をわっていくうえで重要な要素であり、幅広い研究の対象になってきた。そうした研究でわかったことの一部をここで紹介したい。これらは、評判を形成し影響力や権力を獲得するうえで大きな意味を持つ。


第一に、あなたの第一印象は最初のほんの数秒、いやそれどころか数十分の一秒で決まってしまう。印象というものは、事前情報や過去の実績に加えて、そのときその場の表情、ふるまい、声、外見によって形成される。ある調査によると、人々が初対面の人に会って最初の一一ミリ秒(一〇〇〇分の一一秒)で下す判断は、たっぷり時間をかけて相手を観察した後の判断と相当程度に一致するという。したがって、人物評価というものはごく短時間で下されてしまうわけだ。となれば、第7章で取り上げた力を印象づけるふるまいや話術は、第一印象を形成するうえでもきわめて重要になる。


第二に、読者には驚かれるかもしれないが、ほとんど瞬時に決まってしまう第一印象はあまり外れがないのである。社会心理学者のナリーニ・エムバディとロバート・ローゼンタールは、臨床心理学・社会心理学にまたがる幅広い分野で、印象の妥当性を調べるメタ分析を行った。その結果、五分にも満たない短い時間のふるまいに対する判断が、その後の人物評価とほぼ一致していることがわかった。しかも三〇秒以下の判断と、五分ほど観察した後の判断とはさほど変わらないという。また、教授の無声音の動画を学生に三〇秒ほど見せて評価させ、その後学期末に講座の評価をさせる実証的研究を行ったところ、両者はみごとに一致した。同じように、学校長が高校の先生の動画を見て第一印象で下した評価と、学校長によるその先生の人事評価とがきわめよく一致するという結果も出ている。


このように、評判形成の第一歩となる第一印象は一瞬で決まってしまうだけでなく、後々まで維持される。研究者によると、第一印象が長続きする現象、言い換えれば、先に提示された情報が優先される現象は、四つのプロセスで説明できるという。どれも、なるほどと思い当たるものばかりである。