第3338冊目 「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)  ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • 自分で自分を売り込むのは控える


イメージを高めるためには、自分で売り込むことの是非をよくわきまえておく必要がある。たとえば採用面接やオーディションなど、自己アピールが求められている場面では、自分の能力を誇示し、自分を上手に売り込まなければならない。ある研究によれば、そうした場面で売り込み不十分だと、相手はその人間を無能だとか、印象が薄いとか、場慣れしていないと判断しがちだという。一方、自分での売り込みには好ましくない面も多々ある。まず、客観的な第三者の目には「信用ならない」と映る。ある研究によると、露骨な自己アピールをする人は自信過剰で傲慢だと見なされやすく、嫌われる可能性が高いという。権力や地位を手に入れるのに万人に好かれる必要はないが、わざわざ人から嫌われるようなことをしても意味がない。


この問題を解決する簡単な方法は、他の人に誉めてもらうことである。同僚や友人が自発的に誉めてくれるのが一番好ましいのは言うまでもないが、たとえエージェントを雇って誉めさせても、自社の広報部門のスタッフにやってもらっても、十分に効果は上がる。私は、自分で自分の能力を売り込んだ場合と、同じ能力を他人に各人してもらった場合と比べる調査を行ったことがある。すると、売り込みをさせたときの方が好かれる確率は高く、能力の評価も高かった。また、エージェントに売り込みをさせた場合の比較実験も行った。プロの俳優を雇ってエージェント役をさせ、ある人物Aの人柄や能力を売り込むビデオを制作する。そしてこのビデオを見せた後に、エージェントはAが雇ったことを明かしたうえで被験者にAの評価をしてもらったところ、Aが自ら売り込みをするビデオを見せた場合よりも、評価が高かったのである。これらの調査結果から、たとえお金で雇われた人が推奨するのであっても、本人が自分で売り込むよりは好感度が高いことがわかる。


言い換えれば、他人による評価は、本人による自己評価よりも信憑性が高い。さらに言えば、有力な広告代理店やPR会社を使ってイメージ戦略を実行できること自体がその人の能力を印象づけ、評判を強める働きをする。だから、自分を安売りしてはいけない。その道の専門家を雇ってうまくやってもらう方が、はるかに効果的である。