第3473冊目  FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学 ジョー・ナヴァロ (著), トニ・シアラ・ポインター   (著), 西田 美緒子 (翻訳)

 

 

 

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

 

 

 

-固まる

 

 

たいていの人は、危険を感じたら「戦うか逃げるかだ」という言葉を聞いたことがあるだろう。けれども実際には反応が三つあって、もうひとつの「固まる」が最初の、最も優先する反応になる。なぜだろうか? ひとことで言うなら、一番効果的だからだ。アフリカのサバンナで狩りをするヒト科の祖先になった自分を想像してほぢい。何気なくあたりを見回すと、藪のかげに潜むサーベルタイガーの姿が目に入った――その瞬間、身を固くするのは間違いない。これは「辺縁系の常識」で、じっと動かないで肉食動物に気付かれずにすんだほうが、へたに動いて大型のネコ科特有の「追いかける、捕らえる、噛みつく」という反応を引き起こすより得策だ。哺乳動物は動くものに反応する性質をもち、それに対抗する確実な方法といえば、じっとしていることになる。それと同時にエネルギーの節約にもなるし、ほかに手はないかとまわりをじっと見まわす時間もできる。進化の試行錯誤の過程でこの反応が功を奏していなかったら、私たちは種として生き延びることは、あるいは進化することはできなかっただろう。

 

 

現代社会では、郊外の家も高層ビルのオフィスもアフリカのサバンナから遠く離れてしまったが、古くから根づいたこの辺縁系の習慣は、そう簡単に消えるものではない。固まる反応はまだ私たちの防御の最前線であり、たくさんのノンバーバルで目にできる。冴えなかった実績の評価を聴く社員は、膝の上で両手をしっかり握りしめ、両足の足首のところで交差して、身を固くする。厳しい質問をされた政治家は、笑顔を作りながらも、両手で椅子の肘かけをつかんだまま放さない。教室の真ん中で立ちすくみ、教授をじっと見つめている学生は、出された課題を読んでこなかったようだ。加害者が尋問を受けると、椅子に座ったまま身じろぎもせずに、犯罪について何も知らないと主張する。こうした例にはいずれにも固まる反応が入り込んで、体が話す言葉の中に、はっきりと姿を現している。

 

 

暴力沙汰が起こったときや、突然大きな音が聞こえてきたときにも、人はよくショックを受けたように動きを止める。これも固まる反応の表れだ。この反応はとても敏感なので、私たちは悪い知らせを聞いたときにも一瞬動きを止め、その悲しい出来事を心の中で反芻する。