第3468冊目  FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学 ジョー・ナヴァロ (著), トニ・シアラ・ポインター   (著), 西田 美緒子 (翻訳)

 

 

 

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

 

 

 

-同じ言葉の威力

 

 

熱心に聴くと当時に、言葉のミラーリング(鏡に映したように相手とまったく同じ言葉を使うこと)が大切だと、高名な心理学者で著作も多いカール・ロジャーズが研究で明らかにしている。言葉のミラーリングは、単純だがとても威力のある心理療法のテクニックで、短い時間で相手と気持ちを通じさせる効果をもつ。私はFBI時代に、相手が心を開いて話してくれる雰囲気を作るために、この方法が大きく役立つことを知った。

 

 

ロジャーズは、心理療法を施す相手の心に根ざした質問をすることによって、その相手とのあいだに治療効果の上がる関係を築けると考えていた。そのために、ただ患者の言葉をよく聴き、患者が使った言葉をそのまま使って返事をした。もしも患者が「私の子どもは」と言えば、ロジャーズも「娘さん」でなく「子ども」という言葉を使う。言葉のミラーリングは、医学、心理学、販売、金融、統治など、親しみを感じる関係を築くことが重要な仕事で、力強い道具になる。

 

残念ながら、ほとんどの人の言語は自分中心で、会話でもそれぞれ自分が好きな言葉を使っている。たが最も効果的にコミュニケーションするには、会話する相手の言葉を使わなければならない。そうすることによって、相手の心の中にあるもの、言語的に――心理学的にも――気持ちが落ち着くものを、映し出して見せることができる。会話する相手と、すぐに同調できる。

 

 

私は50代だが、若いころから何か問題があれば「プレブレム」という語を使い、今は同じ意味でよく使われる「イシュー」という語を使ったことはなかった。だから、誰かに「これで問題はありますか?」と声をかけられるとき、イシューと言われると、プロブレムほどの実感がわかない。私は「イシュー」とい言葉にほとんど共感をおぼえることがなく、おそらく同世代から上の年代の人たちも同じだと思う。