第3469冊目  FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学 ジョー・ナヴァロ (著), トニ・シアラ・ポインター   (著), 西田 美緒子 (翻訳)

 

 

 

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

 

 

 

言葉の好みをミラーリングできない状況は、ビジネス界で働く人たちを対象にしたセミナーでよく見かける。顧客が自分と同じように専門用語を理解している、または使っていると、はじめから決めてかかっている場合だ。だが、そうとは限らない。気を配り、慎重に耳を傾けなければいけない。顧客が、「何ドルかかるの?」と尋ねてきたら、「統一小売価格は……」などと返事をしないように。相手の使っている難しい言葉を使うと、話はしていても効果的に通じ合うことができず、心の響くコミュニケーションにはならない。もし顧客が「今の景気は本当におそろしい」と言うなら、相手が「おそろしい」と思う気持ちを理解していると伝える必要がある。だから「不安なお気持ちはわかります」と言ってはだめだ。顧客は「不安」なのではなく、「おそろしい」のだ。相手の(自分中心ではなく、相手中心の)言葉を使えば、相手にすっかり共感していることを表現できる。相手は無意識のうちに、心の深いところで自分が理解されていると感じ、打ち解けて会話がはずむようになる。

 

 

私は働きは始めてまもなく、連邦政府から手配されていた逃亡者を連行する任務で、共通の言葉を使う大切さを学んだことがある。その男をアリゾナ州キングマン郊外で逮捕すると、男は自分の人生について語りだした。そこで私は一番近くにいる判事のもとまで車を運転しながら、男が言った言葉をそのまま使いながら話に応じた。「かっこう悪い」、「恥ずかしい」、「心配」、「熱心なクリスチャン」などだ。私は男に、逮捕されたのは恥ずかしくてかっこわるいだろうし、熱心なクリスチャンなら母親がどう思うかが心配なことはよくわかる、と語りかけた。すると男はフェニックスに着くまでの短い間で、私を信用するようになった。そして被害者の名前など、それまで担当していた取調官には言わなかったことまで、私には話してくれた。そのような自白を引き出せたのは、私が言葉巧みだったからではなく、言葉のミラーリングの力をよく知っていたからだった。

 

 

顧客や患者や部下や仕事関係の人が使う言葉をよく聴き、自分も同じ言葉を使うという技を、うまく活かそう。もちろん家族や恋人でも同じだ。そうすれば、気持ちをよくわかってくれる人、親身になって話を聴いてくれる人だとみなされるようになる。