第3331冊目 「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)  ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • 説得力のある言葉を選ぶ


強い言葉は強い感情を呼び覚まし、理性を圧倒する。聞き手の心に響く言葉、イメージの想起力が強い言葉、具体的でその場にふさわしい言葉……。ウィストン・チャーチルがイギリス首相に就任したのは、一九四〇年五月のことである。一〇年にわたり政権から遠ざけられていた後の復帰であり、しかもドイツとの戦況は思わしくない。そんな中でチャーチルの雄弁術は戦う首相像を強く印象づけ、国民を鼓舞し、戦争の潮目をも変える効果があった。


「諸君は、政策は何か、と問うだろう。私は答えよう。戦争を遂行することだ、と。海で、陸で、空で、われわれは戦う。諸君は、目標は何か、と問うだろう。私は一言で答えられる。勝利だ、と。どのような代償を払おうとも、どのような恐怖が待ち受けようとも、どれほど道が長く険しかろうとも、勝つのだ。勝利なくして生き残ることはない」


チャーチルは言葉の力を知っていた。「永遠に残るのは言葉だけだ」と語ったこともある。この点では、オリバー・ノースも同じと言えるだろう。ノースはイラン・コントラ事件の公聴会で、人質を返してもらうためならイラン人をディズニーランドに招待してっていい、と述べた。これを聞いた人々は、人質やディズニーランドを鮮明にイメージすると同時に、ノースの一途な気持ちも理解してことだろう。対照的にドナルド・ケネディの証言では、「契約書第○条の規定によれば」とか「会計監査に関する○○省の解釈に従えば」といった表現がやたら多かった。法律のテクニカルな細部を盾にして、法的保護を得ようとしたのである。だが、ヨットや銀器が経費と言えるのかという常識的な疑問に答えるのに、これがふさわしいやり方とは言えまい。