第2856冊目 私の財産告白 本多 静六 (著)


人生と財産―私の財産告白

人生と財産―私の財産告白


身のほどを知る――自惚れの自戒がとんだ方向に外れたが、この話の骨子にはきわめて重大の意義がある。つまり、平凡人は平凡人としてひたむきな、一時に一ヵ所に向けられた努力が大切であって、精力の二分三分は厳に戒めなければならない。多々益々を弁じ、行くとして可ならざるなしとは正に天才者の道で、平凡人が不用意にこれを見習うようなことがあってはならないのだ。


有志家的奔走もよろしい、政治家的肝いりもわるくはない。だが、それはあくまでも余暇余力を割くべきであって、決して本業の精進に支障を生ぜしめないだけの大切な限度がある。