第2635冊目 プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)


  • 劣後順位の決定が重要


明日のための生産的な仕事は、それらに使える時間の量を上回って存在する。加えて、明日のための機会は、それらに取り組める有能な人の数を上回って存在する。もちろん、問題は混乱は十分すぎるほど多い。


したがって、どの仕事が重要であり、どの仕事が重要でないかの決定が重要である。唯一の問題は、何がその決定をするかである。自らが決定するか、仕事からの圧力が決定するからである。何が決定するにせよ、仕事は利用できる時間に合わせて行わざるをえない。機会は、それを担当する有能な人が存在して、初めて実現できる。


圧力に屈したときには、重要な仕事が犠牲にされる。特に仕事のうちもっとも時間を使う部分、意思決定を行動に変えるための時間がなくなる。いかなる仕事も、組織的な行動や姿勢の一部になるまでは、スタートしたことにならない。いかなる仕事も、誰かが自分の仕事として引き受け、新しいことを行う必要や、新しい方法を行う必要を受け入れなければ始まらない。いかにプロジェクトとして完結しているかに見えても、それを誰かが自分の仕事としてルーティン化しなければ完結するに至らない。時間がないために、それらのことが行われない場合には、それまでの仕事や労力はすべて無駄になる。だが仮にそうなっとしても、それは単に、仕事の優先順位を決定しなかったことの当然の報いである。


実は、本当に行うべきことは優先順位の決定ではない。優先順位の決定は比較的容易である。集中できる者があまりに少ないのは、劣後順位の決定、すなわち取り組むべきでない仕事の決定と、その決定の遵守が至難だからである。


延期とは断念を意味することを、誰もが知っている。延期した計画を後日取り上げることほど好ましからざるものはない。後日取り上げても、もやはタイミングは狂っている。タイミングは、あらゆるものの成功にとってもっとも重要な要因である。五年前に賢明であったことを今日行っても、不満と失敗を招くにすぎない。延期は断念であるというこの事実が、何ごとであれ、劣後順位をつけて延期することを尻込みさせる。最優先の仕事ではないことを知っていても、劣後順位をつけることはあまりに危険であると思ってしまう。捨てたものが、競争相手に成功をもたらすかもしれない。