第2612冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著), マーヴィン カーリンズ (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • 重力に逆らう顔の表情


「顎を上げろ(元気を出せ)」という古くからある表現は、スランプや不運に苦しんでいる人に向けられる言葉だ。この小さな民衆の知恵は、逆境に対する辺縁系の反応を正確に反映している。顎を下げている人は、自信を失い、不愉快な気持ちに襲われているように見えるのに対し、顎を上げている人は、前向きな気持ちでいるように見える。


顎に言えることは、鼻にも言える。重力に逆らって鼻を上に向ける表情は、大きな自信を示すノンバーバルの手がかりだが、鼻を下に向けるのは自信のなさを表すサインだ。ストレスを感じたり動揺したりすると、顎(と鼻、この二つはいっしょに動く)を高い位置に保つのが難しくなる。顎を隠すのは、退散か遠ざかることを意味し、実に正確な不快な気持ちを表すことがある。


とりわけヨーロッパではこのような表情をよく見かけ、下層階級の人を見るときや誰かを鼻であしらうときに、鼻を高々と上げる。旅行中にフランスのテレビで見かけた場面では、ある政治家が、格下とみなしているらしい記者から質問されたとき、ただ鼻を高く上げてからその記者を見下ろし、「いや、それには答えない」と言っていた。その鼻が、政治家のステータスを記者に対する軽蔑した態度を物語っていた。複雑な人生を歩んで最後にはフランス大統領になったシャル・ド・ゴールドは、このような高慢な態度とイメージを前面に押し出すことで有名だった。