第3141冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著),‎ マーヴィン カーリンズ (著),‎ 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)


何年か前、私が娘といっしょに歩いているとき、娘の知っている少女とすれちがったことがある。娘は少女に低い位置で手を振りながら、ちょっとだけ目を細めた。私は二人の間に何か気まずいことがあるのではないかと不審に思ったので、どんな知り合いなのかと訊いてみた。以前に言葉を交わしたことのある、高校のクラスメートなのだと言う。知っている者同士の礼儀から低い位置で手を振っていたが、目を細めたのは正直な感情で、不快感と(七年にもわたってつのった)嫌いな気持ちを伝えていた。本人は、目を細めた表情が少女に対する本音を語っていると気付いていなかったが、私にはその情報が信号灯のようにはっきりと見えた。


同じ現象をビジネスの世界でも見ることができる。契約書を読みながら顧客が急に目を細めたら、契約条項の言葉づかいの難しさや、不愉快な疑問の気持ちが、瞬時に目に表れたものだ。このような取引相手はほとんどの場合、見解の相違や嫌悪感を伝えるはっきりしたメッセージを送っていることに
、まったく気付いていない。


落ち着きなないときに目を細めるだけでなく、不安を感じさせるものを近くで見た後にも眉を下げる人がいる。眉をアーチ型に高く上げる動作は大きな自信と快感を表す一方で(重力に逆らう行動)、下がった眉は自信のなさと不快感を表すのが普通で、弱さと頼りなさを伝えている。