第2481冊目 入社1年目の教科書 岩瀬 大輔 (著)


入社1年目の教科書

入社1年目の教科書

  • つまらない仕事はない


よく「つまらない仕事」という言い方を耳にします。


僕は、世の中の仕事につまらないものなどないと断言したい。単調な仕事だとしても、面白くする方法はいくらでもあるからです。たとえば、会議の議事録で考えてみましょう。はじめのうちは、議事録の作成を頼まれると「誰でもできる(つまらない)仕事」と思うかもしれません。しかし、その仕事は何のためにやるのか。その意味と目的を知れば、様々な工夫ができるのです。


会議の参加者の記憶に残すために使うのか。会議を受けて次に進むステップを検討するために使うのか。ディスカッションした内容から新たな提言を生み出すために使うのか。


社長や役員に見せるなら、A4版の紙一枚に簡潔にまとめる必要があります。参加者の発言を証拠として残すなら、丁寧に書き込むことが求められます。目的や用途によって、議事録はまったく異なった姿になります。


いまの僕ならば、疑問点、改善点などを載せるでしょう。追加で質問すべきポイント、調査が必要な点、提言を入れるなど、自分なりの付加価値をつけることを意識します。そうすれば、議事録を書くという仕事も、つまらない仕事と感じることはないと思います。


シアトル・マリナーズイチロー選手は、毎日のように素振りをしているはずです。イチロー選手ほどのスーパースターでも「素振りって単調でつまらない練習だよね」とは言わないでしょう。一般的に、アスリートは気の遠くなるほど単調な基礎練習を繰り返すものです。そうした練習を、単調でつまらないと嘆く一流のアスリートを、僕は知りません。


楽家も同様です。大学のときに所属したジャズサークルに、天才サックス奏者と常々関心していた1年生の後輩がいました。ある日、朝から晩まで一緒に部屋にいる機会がありました。彼は、黙々と基礎練習をやり続けていたのです。


本当の天才は、誰よりも基本を練習するものです。その世界で成功した人は、皆同じことを言います。経営コンサルタント大前研一さんも、若いころは会社に残って過去のプロジェクトのデータベースを隅から隅まで読んだと聞いています。


つまらない仕事の代名詞のように言われるコピー取りを頼まれたら、コピーしながら資料を全部読んでしまえばいいのです。読んでみると、ビックプロジェクトが動いている様子や、取引先の真の姿など、自分が担当していない案件の情報に触れることができるかもしれません。


こんな仕事があるかどうかわかりませんが、「資料を全部書き写せ」と言われたとしても、僕は不満に思いません。「データをエクセルに入力せよ」もまたしかり、手を動かせば動かしただけ、面倒くさければ面倒くさいだけ、体や脳に負荷がかかって強くなると思うからです。


一見単調な仕事でも、足腰を鍛えるためには欠かせないものだと考えて臨んでください。見方を変えることによって、あなたが向き合う仕事はまったく違うものとして見えてくるはずです。