第2295目 入社1年目の教科書 岩瀬 大輔 (著)


入社1年目の教科書

入社1年目の教科書

  • 単純作業こそ「仕組み化」「ゲーム化」


単純作業も「何のためにやるのか」という目的を意識して取り組めば、面白くなると言いました。方法はそれだけではありません。「仕組み化」もその一つです。


「このデータをエクセルに入力してくれ」


上司が指さしたのは、資料の束です。


ここから必要なデータだけを拾って、表計算ソフトのエクセルに入力をする。資料の内容を一つ一つ確認しながら、数字をピックアップして、正しく入力しなければなりません。


単に入力することだけを考えて取り組むと、辛くて面倒な仕事に思えてなりません。


このような場合、データ入力をし終わったあとの使い方を想像してみてはいかがでしょうか。


まずは資料とにらめっこ。何のデータを入力するのか、じっくり観察します。


円グラフなのか棒グラフなのか、折れ線グラスなのか。


他業界やライバル企業の数字との比較もありそうか。


そう考えながら入力をしていると、単純作業であるデータ入力も、違った顔を見せるものです。


また、数字そのものを追いながらデータ入力をしていれば、時系列でどのような数字の変化があるのか、規則的なのか不規則的なのか、個々のセルに入力する数字も、並べて眺めてみると何かしらの傾向や大局がつかめることもあります。


もしこの仕事が膨大で単調で退屈な作業だと感じたら、次にデータ入力を担当する人が効率的に作業を行うためのパターンを考え出してください。入力する前に数字にマーカーを引いておく。単位や品目などをあらかじめ打ち込んでおいたテンプレートを用意する。こんな具合に、いくらでもアイデアはあると思います。


つまらない仕事、単調な仕事には改善の余地があると考えながら取り組めば、単純作業も違った様相を見せるはずです。ほかには方法はないのか。あるいは本当にこの仕事は必要なのか。仕組み化を検討したあとは、この作業そのものをなくすことを考えてみてもいいかもしれません。


新入社員には、単調な仕事が繰り返し依頼されることがあります。その際には、作業を「ゲーム化」することを考えてみてもいいでしょう。


最初は1時間かかっていたデータ入力を、効率性を追求した結果5分間短縮できたとします。さらにもう5分間のスピードアップを実現するためには、どんな改善を加えればいいかを考えるので。


僕はこうした単調な作業が嫌いではありません。むしろ楽しんで取り組んでいました。


たとえば、参議院選挙の都道府県別投票率を入力するとします。どうせやるのですから、どれだけきれいに入力できるかということをまず考えてみます。


単純に投票率を入力するだけでは芸がないので、年代別の比較ができるように打ち込んでいきます。それだけでもまだ面白くないので、投票率が高い順に並べ、高齢化と投票率の相関関係を俯瞰できるような資料を作るのもいいでしょう。


どんな仕事にも、必ずその人なりの付加価値をつかえられるはずです。頼まれてもいないのに付加価値をつけて情報を渡そうとする姿勢は、必ず他者との差別化につながります。仕事を頼んだ上司の、あなたを見る目も変わってくるでしょう。


「どうしたらもっと見やすくなるのか」


「どうしたらもっと効率的にできるか」


常に自主的に工夫を凝らし、提案し、実行し、ほかの人とは違う成果を提出し続ければ、次に依頼される仕事は、単調なものではなくなるはずです。