第2333冊目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

  • 声を調整する


話ながら声のトーンを変えることは、言葉でパワーと誠意を伝えるための基本的なテクニックだ。コーネル大学のスティーブン・セシ教授は、1995年度の発達心理学の講義で、秋学期と春学期にそれぞれ300人の学生に教えた。セシはあいだの冬休みを利用して、講義のスタイルを改善するためのレッスンを受けた。声のトーンを頻繁に変えて、ボディランゲージを使い、全身で熱意を伝える練習をした。


春学期が始めると、秋学期とまったく同じ内容の講義をした。一言一句変わらないことを証明するために、講義を録音して単語をひとつひとつ比較したほどだ。2つの学期の違いは、声の変動と身ぶり手振りが加わったことだけ。成績の評価基準も、教材や講義の時間帯、試験も同じで、受講する学生の人口統計学的データも基本的に同じだった。


しかし学生からの評価は、すべてについて春学期のほうがはるかに高かった。教科書に関してされ、肯定的な評価が20%も多かったのだ。さらに、試験の成績は秋学期の学生とほぼ同じだったにもかかわらず、春学期の学生のほうがはるかに多くのことを学んだと感じていた。セシについても、知識が多く、人の意見に柔軟で、クラスの運営がうまいという評価が多かった。繰り返しになるが、いずれの要素も秋学期から何も変えなかったのだ。


講義を聴いた人の評価が、内容より講義のスタイルに大きな影響を受けることは、さまざまな研究からわかっている。なかでも声は、パワーと誠意を伝えるカギとなるが、カリスマ的な声は1種類ではない。何を伝えたいか、誰とコミュニケーションを取りたいかによって、声の異なる特徴を強調しよう。


MITのメディアラボが、セールスの電話の声をいっさい聞かなくても結果を予測できるという実験をした際に、予想に必要な基準は次の2つだけだった。

  • 自分が話す割合と、話を聞く割合
  • 声の変動


話すことと聞くことのバランスの取り方は、すでに説明したとおりだ。ここでは声について説明する。声をどのくらい変えるかは、説得力とカリスマに影響を及ぼす。声のピッチ(高い、低い)、声量(大きい、静か)、トーン(済んだ響き、暗い響き)、リズム(流暢、歯切れがいい)などを調整して、声を変えるテクニックを学ぼう。