第2188冊目 ユマニチュード入門 本田 美和子 (著), ロゼット マレスコッティ (著), イヴ ジネスト (著)


ユマニチュード入門

ユマニチュード入門

  • 抑制はしない

ケアをする人にとって、よい患者や入居者とはどういう人でしょうか?


もしあなたの施設が寝たままで清拭するのが当たり前にであったなら、ベッドで静かに寝ている人が「よい」人です。ケアをしているときに動かない人のことですね。一方で、転ぶ危険性があると判断したのに病室から出歩くような人は困りますね。そんな姿を見かけたら、仕事の手を止めて駆け付けて「どこに行くんですか?」「待っててください」「動かないでください」と言わなければならないからです。


医療機関では治療が何よりも優先されますし、医療安全の確保もまた重要な課題です。そのため看護師は、医師から指示を得て「安全に」抑制を行うよう努めます。抑制帯がミミズ腫れをつくっていないか? 褥瘡をつくっていないか? 患者にとって危険が生じていないか? これらを定期的にチェックします。


しかしそのような細心の注意を払っていても、入院の原因となった肺炎の治療が終わった2週間目には歩けなくなっている、ひとりでは食べられなくなっている、という皮肉な現実があります。


抑制の害は、ごく普通の人が一日でもベッドでの抑制に耐えらるかどうかを考えてみれば明らかでしょう。健康を害している人にとってはさらに有害な、とても危険な行為です。