第2140冊目 (文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 三枝理枝子 (著)


(文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 (サンマーク文庫)

(文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 (サンマーク文庫)

  • 本気度は口よりも目でわかる


前項の「あいさつ」でもお伝えしましたが、「ながら動作」はマナー違反です。とくに、相手がいるのに目を見ないで話すのは悪い印象を与えます。会話のときに目線を合わせてもらえないと、人は不快に感じるのです。


たとえば、目の前の人と話をしているのに、途中で目をそらして考え事をしたり、物音がしたほうを見たり、他の人の動きを追ったりされたらどんな気持ちになるでしょうか。


さっと、話していて落ち着きがなくなるだけではなく、相手のことを信用できなくなると思います。雑談ならまだしも、重要な話をしているときによそ見をされたら、何かやましいことがあるようで、取引をしたいとは思いません。


あるとき、私のセミナーの受講生が見積書を持って、約束をしていた取引先との打ち合わせにうかがいました。顔見知りの担当者に加えて、そのとき初めて会う課長も同席してくださったそうです。


それは見積書をお見せして、説明をしている最中のことでした。出入り口付近でド〜ンと鈍い音がしたので、彼は「何だろう?」と、そちらに目を向けたそうです。また、自分の好みの女性社員がお茶を持ってきてくれたので、その姿もボーッと見ていました。さらに別のお客が来たようで気になってしまい、その様子も目で追っていました。


すると、取引先の課長にこう言われてしまいました。


「君は先程からキョロキョロしていて、落ち着きがないな。本当にこの見積書に間違いはないのかね? もう一度作り直してきなさい。それは、視線には気をつけたほうがいい」


そう注意を受け、話もそこそこで帰る羽目になったそうです。


後日、見積書を作り直して連絡をすると、担当者から「今回はもう他社に決まりました。また連絡します」と言われてしまいました。そして、その会社からは二度と連絡が入ることがなかったそうです。


彼の落ち着きのないしぐさに取引先の方が真剣さを感じられず、不信感を抱いてしまったのですね。


「ずっと目を見て話すのは恥ずかしいですね。どこを見たらいいかわからなくなって」と言う方には、以下の方法をおすすめします。


相手の両目とのど仏(女性の場合はそれに相当する位置)を直線で結んだ逆三角形内に視線を持っていくといいでしょう。とはいえ、ここぞというときは目をしっかり見てください。いずれにせよ目を合わせるのは、相手が大事に思っているから、相手に関心があるから、相手の存在を認めているからこそです。


音がしたり、人が通ったりしたからといってそのたびに視線を外していたら、相手はどんな気持ちになるでしょうか。自分が大事にされていない、この場を真剣に考えていないと思われても仕方ないと思います。


目の前の人が重要ならば、視線を外すようなことは決してできないはずです。