第2293目 (文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 (サンマーク文庫) 三枝理枝子 (著)
- 作者: 三枝理枝子
- 出版社/メーカー: サンマーク出版
- 発売日: 2012/11/15
- メディア: 文庫
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- 別れ際の印象ほど心に残るものはない
「本日は遠方よりお越しくださいまして、誠にありがとうございました。どうぞお気をつけてお帰りください。またお会いできますことを心より楽しみにしております」
私が講演にうかがったとある企業の支店でのことです。
支店のトップである支店長、副支店長、そして他の店舗の店長数名が車寄せまでご一緒してくださり、私の乗った車が見えなくなるまでお辞儀をして見送ってくださったことがありました。
帰り際、「ここでけっこうです」と控室がある階のエレベーターホールで申し上げたのですが、「いえいえ、下まで参ります」と仰ってくださり、車寄せで見送っていただいたのです。
最後まで心のこもった見送りをしていただき、温かい気持ちで帰路についたことを覚えています。
あなたは日ごろ、お客様をどこまでお見送りしていますか?
見送りの形式は大きく分けて四つあります。
まず一番簡易な方法は、面談した応接室で見送るものです。つきあいが長く、気心が知れている方であれば、ここで失礼することもあるでしょう。また、初対面だとしても、訪問される側が役職つきの方であれば、ここで失礼するということもあります。
しかし、ご足労いただいたという思いがあるのであれば、せてめ次の段階、エレベーター前までご一緒してお見送りしたいものです。前述した「案内」のときに同様に、二、三歩斜め前を歩き、エレベーターのボタンを押します。お客様にボタンを押させてはいけません。相手が乗り込み、ドアが閉まるまでお辞儀をしたままお見送りしたいものです。現代ではこのエレベーター前でのお見送りが基本です。
三つ目は、遠方から来てくださった方や重要な取引先、クレームでお越しのお客様などは、必ず出口までご一緒して外まで出てお見送りします。相手の姿が見えなくなるまで、「どうぞお気をつけて」と相手に思いを馳せ、お見送りをしましょう。このとき七歩歩み寄るのでしたね。お客様が二、三歩歩いて、振り返ったら、もう相手はいなかったとしたらどのような気持ちになるでしょう。大変残念で寂しい思いをするはずです。
最後の瞬間、別れ際が大事ということですね。
お客様が振り向かなければ、こちらがお辞儀をしたままお見送りしているとは気がつかないかもしれません。しかし、周囲にいる人、見送られる当人以外の人が心を動かされるといことがあるのです。
また、自分が見送られる側になったら、相手が見送り続けているかもしれませんので、数歩歩いた後に振り返る習慣を持ってください。
見送りとは相手に感謝の気持ちを伝える手段の一つです。相手から心地いい人と思われるようになるには、別れ際を大事にしてください。
四つ目は車でお越しの方が車にお乗りになり、車が見えなくなるまでお見送りする形式です。これが最も丁寧な見送りの方法です。
出迎えよりも見送りに人の気持ちは表れるものです。
食事でも、メインディッシュまで見栄えもよく美味しかったのに、最後の最後、デザートのコーヒーが美味しくなかったら、それだけですべての料理が台なしになってしまいます。リーズナブルで雰囲気がよくても、私だったら二度とそのお店には行かないでしょう。