第2115冊目 スタンフォードの自分を変える教室 ケリー・マクゴニガル (著), 神崎 朗子 (翻訳)


スタンフォードの自分を変える教室

スタンフォードの自分を変える教室

  • 失敗する瞬間に気づく


ミシェルは31歳。ラジオ番組のプロデュサーで、パソコンでも携帯でも絶えずメールをチェックしていました。そのせいで仕事の生産性は下がり、恋人の機嫌もそこねていました。一緒にいてもミシェルがメールに気を取られているからです。


そんなわけで、私の講座を受けにきた女性の目標は、メールをチェックする回数を減らすことでした。最初はずいぶん意気込んだもので、1時間に一度したチェックしないという目標を立てました。


ところが1週間後、そんな目標は全然守れなかったとミシェルは告白しました。困ったことに、いつのまにかメールをチェックしていて、新着のメッセージに目を通しているうちにはっと気づくようなありさまでした。チェックしそうになっているときに気がつけば我慢することもできましたが、携帯の画面を見たり、パソコンでメールをチェックしたりするのはほとんど無意識にやっていたのです。


そこでミシェルは「メールをチェックしそうになった瞬間を意識する」という目標を立てたました。すると翌週には、携帯に手を伸ばそうとしたり、メールを開こうとしたりしている瞬間に気づくようになりました。そのおかげで、間一髪、思いとどまる練習をすることができたのです。


最初はメールをチェックしてしまうまえに、チェックしようとしている自分に気づくことがなかなかできませんでした。けれども、むずがゆくなるようなその感覚が、しだいにわかるようになってきました。


メールをチェックすると、なぜか脳や体の緊張が和らぐような感じがしたのです。それに気づいたミシェルは、あまりの意外さに驚きました。まさかメールをチェックすることで緊張が和らいでいたなんて。自分では、ただ情報に興味があるだけだと思っていました。


しかしメールをチェックしたあとに自分がどんな気分いなっているかに注意を向けるうちに、メールをチェックするのは、じつはかゆいところをかくのと同じくらい逆効果だとミシェルは気づきました――かけばかくほどかゆくなってしまうのですから。


こうして、自分の衝動とその結果の両方を把握できたおかげで、彼女は以前よりも自分の行動をコントロールできるようになっただけでなく、最初の目標をクリアして、ついにメールは業務時間外にときどきチェックするだけになったのです。