第3327冊目 「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)  ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • 聴衆を意識する


ゲイリー・ラブマンは、カジノ経営のハラーズ・エンタテイメントのCEOである。ラブマンは、たいていの社員は年に一、二度しか自分を見ないことを自覚し、社員の前ではつねに「オン」であるよう気を配っている。たとえ一言二言言葉を交わすだけでも、社員への気遣いを示す。まして公の場に出るときは、疲れていたり、体調が悪かったりしても、いつもエネルギッシュに力強く行動する。リーダーのこの活気は、ハラーズの成功要因の一つと言えよう。


あなたは、自分が思っている以上に見られてる。一挙手一投足に注目されるのは、社長だけではないのだ。フランスの一流ビジネススクールINSEADで教えたことのあるモーテン・ハンセンは、こんな失敗談を話してくれた。あるとき、出張から帰ったばかりで疲れ切ったまま授業に出て学生の発表を聞いていた。だがどうしても、集中できない。学生たちは発表を聞きながらも先生の様子を横目で観察し、いつもほど熱心でないと気づくと、とたんにクラスの雰囲気がだらけたという。この経験から、自分がつねに学生から見られていることを意識し、たとえ授業中でなくても表情や態度に気をつけるようになった、とハンセンは話している。


会議や打ち合わせに身を入れていること、目の前の人に集中していることを示すには、まず情報端末やノートパソコンや携帯電話や、その他諸々のハイテク機器をしまうことだ。こうしたものがあると、どうしても気が散ってしまう。誰かと話しながらメールを読むのは、「私にはほかにやることがある、そちらの方が、おまえと話すより大事なのだ」と言っているのと同じことである。注意欠陥障害が蔓延する今日のハイテク社会では、そうした無作法は想定内だと言う人がいるかもしれない。マルチタスク人間を始終見かけるようになった今日この頃では、注意散漫はもはやふつうだと言う人もいることだろう。だからこそ、人と会うときに携帯電話の電源を切れば、その効果は絶大である。