第2114冊目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

  • 人々はどこにカリスマを感じるか


権威のカリスマは主に、自分のパワーを周囲に感じさせる能力にもとづいている。つまり、この人は自分たちの世界を変える力を持っていると、人々に信じさせることができるかどうかだ。権威のカリスマを評価する基準は大きく4つ。ボディランゲージ、外見、肩書、周囲の反応だ。


最初に考える基準は、ボディランゲージだ。その人物が他人や周りの世界に影響を与えるようなパワーを持っているという自信が、ボディランゲージに表れているだろうか。


次に外見に注目する。人間は地位を気にして、地位に感動する生き物だ。この本能的な反応が、生き延びる武器となる。地位の高い人は、私たちを助ける力も傷つける力も持っている。生き延びるためには、自分が序列の中でどこにいるかを知らなければならず、他人に地位を判断するあらゆる手がかりにきわめて敏感になる。


そこで服装は、地位を判断する強力な手がかりとなる。私たちは地位を通じてその人の潜在的なパワーを、パワーを通じて権威のカリスマを判断する。たとえば、専門知識(医師の白衣)や権力(軍人や警察官の制服)を象徴する服装。高価な服など、社会的地位や成功を象徴するものには、とくに注目する。ニューヨーク市で行われたある実験では、横断歩道のない道路を横断する人が高価な服を着ている場合と普段着を着ている場合では、前者のほうが後に続く人が多かった。


別の実験では、ショッピングモールでアンケートを行う調査員に、ブランドのロゴ入りのセーターとロゴなしのセーターを着せた。すると、ロゴ入りの調査員のアンケートには52%の人が回答に応じたのに対し、ロゴなしの調査員は13%だった。高価そうなロゴは、慈善精神にも影響を及ぼす。明らかにブランドものとわかるマークのついたシャツを着たグループは、マークのついていないシャツを着たグループ(それ以外の条件はすべて同じ)の2倍近い寄付金を集めたのだ。


権威のカリスマを評価する最後の基準は、その人おの肩書と周囲の反応だ。これら2つの要素は多くの手がかりをもたらすが、ボディランゲージと外見ほど重要ではない。肩書は立派だが、周囲からほとんど尊敬されていない人がいると、私たちは本能的に、肩書は低いけれど大いに尊敬されている人に比べて真のパワーを持っていないのだろうと理解する。


これらの基準にもとづく評価は、全体でも1秒足らずでできるが、肝心なのはその順番だ。複数の基準に矛盾がある場合、人は先に判断した基準を信頼しやすい。繰り返しになるが、ボディランゲージはカリスマを示すあらゆる手がかりの中で最も優先される。ほかのすべての手がかりは問題がなくても、不安を示すボディランゲージがあれば、権威のカリスマのあらゆる潜在能力がむしばまれる。反対に、ボディランゲージさえしかりしていれば、権威のカリスマはある程度の信頼を勝ち得るだろう。