第2102冊目 ユマニチュード入門  本田 美和子 (著), ロゼット マレスコッティ (著), イヴ ジネスト (著)


ユマニチュード入門

ユマニチュード入門

  • ポジティブな見方とネガティブな見方


「見る」という行為が相手に与えるメッセージは、2つに大別できます。それはポジティブなメッセージとネガティブなメッセージです。


水平な高さで、正面の意遅から、近い距離で、時間的に長く相手を見たとき伝わるのは、ポジティブな意味です。具体的には、水平に目を合わせることで「平等」を、正面から見ることで「正直・信頼」を、顔を近付けることで「優しさ・親密さ」を、見つめる時間を長くとることで「友情・愛情」を示すメッセージとなります。


これとは逆に、ネガティブなメッセージとはどのようなものでしょうか。ポジティブなメッセージと反対の状況を考えてみればわかりやすいと思います。


水平ではなく垂直に、正面ではなく横から、近づかずに遠くから、時間的にとても短く、相手を見る状況です。これらの行動は、垂直に見下ろすことで「支配・見下し」を、目の端で見るような横からの視線で「攻撃」を、遠くから見ることで「関係性の薄さや否定的な意味」を。ちらっと短い視線を投げかけることで「恐れ・自信のなさ」を相手に伝えています。


これはケアの現場だけではなく、日常生活でもよく経験することです。わたしたちは「見る」ことを通じて、さまざまな感情、他者との関係のあり方を伝えているのです。

  • 「見ない」は「いない」


しかしどんなに否定的なメッセージであったとしても、「相手を見る」以上は、当の本人が存在していること自体を認めています。ここで強調しておきたいことは、「見る」ことに関する最悪な状態です。これは「相手を見ない」ということです。「相手を見ない」ということは、すなわち「あなたは存在しない」というメッセージを発していることにほかなりません。