第1953冊目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール [単行本] ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・イェッツイ (著)


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール


得意分野を見つけて磨きをかける


練習する目的のひとつは、まだできないことを、うまくできるようにするこだ。この種の練習は日々の生活で重要な役割を果たす。私たちは向上が必要な分野を見つけてはそれに取り組むが、もっぱら弱いほうからものを見る癖がつかないようにすることが大切だ。すでにうまくできることをもっとうまくするのも、練習の効用なのだから。


『スイッチ!』(早川書房)の著者であるチップ・ハースとダン・ハースは、見落とされがちだが、まだ活用されていない力について論じるために、「ブランド・スポット」(手本となる成功例)という新しい用語を作った。正しいことを見きわめるより、まちがいを嘆き悲しむほうがたやすいと彼らは指摘する。ここではこの「ブラインド・スポット」と借りながら、すでにうまくできることを集中的に練習し、さらにうまくなって、大きな価値を生み出せることを再認識してみよう。


すぐれた教師に関するダグの研究結果のなかで、かなりほっとしたのは、並はずれた成果を誇るチャンピオン教師も多くの面で私たちと変わらないということだった。彼らにも弱みがある。説明が下手だったり、授業計画に数日の穴があったりもした。すぐれた教師の何がいちばんちがうかというと、「強み」が桁はずれに強いのだ。


ある数学教師(ここではビルと呼ぶ)について考えてみよう。ビルは毎年めざましい結果を出していた。とはいえ、数学に関する知識は一部不充分だし、そこそこ几帳面だが間が抜けているところもある。教壇に立って初めて、その授業に必要だったプリントのコピーを忘れていたことに気づくこともあった。しかし、彼がすぐれているのは、生徒に活気を与える才能だった。エネルギッシュに進む授業でその才能を発揮すると、生徒は全力を尽くし、次から次へと喜んで問題に取り組む。ビルの力は教室に入ればすぐにわかった。むずかしい問題に取り組む生徒の興奮や迫力、情熱が、ほんの小さな動きにもあふれている。この力が、生徒にコピーをとりにいかせる不面目を補ってあまりあった。じつは、ビルのような教師は大勢いる。強みと弱みの組み合わせが異なるだけだ。生徒に動機や活気を与えるのが苦手な教師は、もしかすると授業計画を立てさせれば世界クラスかもしれない。


ここかれ導き出される結論はひとつ、ずば抜けた力を持ち教師を育てたければ、弱みをいちいちあげつらうのをやめ、強みを最大限に引き出して、弱みを霞ませるほどすばらしいものに育てあげるのに集中したほうがいいということだ。練習の参加者が、これから練習することはすでに得意だと言うときには、たいてい練習の手間を省きたいという意味だが、得意ならさおさら練習する理由がある。強みを強化すれば、もっとすぐれたものにできる可能性が高いからだ。


強みを強化することにはさらにいい点がある。頂点をきわめたい分野で自分がすぐれていることが再認識でき、前向きな気持ちになれるのだ。練習が楽しくなればもっと練習しようと思い、さらに上達する。プレゼンテーションが得意な人は、練習することでいっそう自信がつくし、スキルが応用できそうなほかの仕事を割り当てたりしてもいいだろう。強みを見つけてそのスキルをもっと幅広く使えるようにすることは、会社としても(練習の目的としても)きわめて生産的なことだ。


「ブラインド・スポット」はチームで練習するととりわけ効果的だ。どんなチームでも、全員が同じ強みを共有していることはまずない。ある人のブラインド・スポットがほかの人の手本になるので、チーム全体にとって価値がある。チーム全体が恩恵を受け、強みを発揮した人は輝いて、仲間から尊敬される。本当にすぐれたものを見分ける同僚の目にさらされることで、活動そのもののレベルも、フィードバックの質も上がるので、その人はさらに上達する。同僚が重要なスキルを共通の仕事で使っていることがわかって、チームの結束力は強まり、誰もが生き生きとして、最高の成果を出そうと努力しはじめるのだ。

  • 不得意な分野だけでなく、得意分野を見つけて、才能に磨きをかける。
  • 強みを活かすために、すでに上達したスキルを新しい分野に応用する方法を探る。
  • ひとりの強みをほかのメンバーの手本として、チーム全体に早く行き渡らせる。