第2656冊目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・ェッツイ (著)


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

  • 事前にすべきことを伝える2


よくやくアミルは、状況をすっかり誤解していたことに気づく。サラもだ。もしふたりで意見を交わす時間がなく、その日についてアミルが感じたことをそのままにしていたらどうだなっただろう。アミルはまちがった瞬間に集中して、そのとき見たことをまちがって解釈し、まちがったことを覚えてしまったはずだ。サラがあとから考えてみると、落とし穴があった。アミルがシャドーイングをしているのは、職場に来たばかりの新人だからであり、ならば、見たことをどう解釈すべきか彼が知っていると期待するのは、当然でも現実的でもなかったのだ。


もしサラがアミルにまえもって打ち合わせで見るべきことを伝えていたら、この話はどうなっただろう。たとえば、彼女はこんなふうに言える。「アミル、お客さんに対してこれから私がどうするか見ていて。この数字がお客さんに同意してもらいたい金額。あちらの返答を待つあいだ、私は黙りこむかもしれない――気まずい雰囲気になると思う――でも、私がすぐに話しだしたら、それはたいていこちらが要求した金額を撤回するという意味だから。目標を達成するために、ほかに私がどんなテクニックを使うか気をつけていて」。これでアミルが見るべきことがはっきりするし、見つけられる可能性も高まる。さらに、目標達成のためにほかに何をするかという具体的な質問を投げかけておいて、アミルの理解力を試すこともできる。


しようとすることをまえもってわかっていないで手本を示す本当の危険性は、学ぶ側が本筋から離れた些末なことや、成功を阻害しそうなことを最初から身につけて、練習に入りうることにある。アミルは仕事の能力に対して誤った考えを持ったまま働きをはじめるところだった。手本をまちがえて解釈したために、顧客との打ち合わせで好ましくない行動をとる可能性も大いにあった。あるサッカー選手はスター選手の足さばきに注目するばかりで、目の使い方を見逃すかもしれない。つまり、プレーに非常に効果のある重要なテクニックを見逃しているのだ。


悩んでいる教師はよく、すぐれた教師に授業を参観させてほしいと頼む。どのように「正しくやる」のか、どのように弱みを克服するのか、方法を学んで、課題へと取り組み方を見習いたいと思うからだ。いい考えのようだが、問題はどこに注目すべきかわからないことだ。指示への与え方を見るべきときに、教室内の貼り紙を見ているかもしれない。授業が進むにつれて、すぐれたこゆしが使う個々のテクニックを見分けて整理することなど誰にもできなくなる。観察しているほうがとりわけ目利きで、教師の意図的な動きの一つひとつを識別できないかぎり、手本の何かが成功をもたらしているのか勝手に判断してしまう。ほんの数分でもショットをコールする時間をとれば、マイナスの経験になりえたものを、最高の手本から学ぶ絶好の機会にすることができるのだ。