第1298冊目 (文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 (サンマーク文庫) [文庫] 三枝理枝子 (著)
- 作者: 三枝理枝子
- 出版社/メーカー: サンマーク出版
- 発売日: 2012/11/15
- メディア: 文庫
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「マジックフレーズ」で人当たりがガラリとよくなる
「ここで素振りをしないでください」
家族でゴルフコースを回っているときにキャディーさんからそう言われました。まだティーグランドには誰も立っていませんでしたし、見回しても素振り禁止の看板は見つけられなかったので、私がそこで素振りを始めた直後のことでした。
「すみません。ここはいけなかったのですね」
ルール違反をしたのは私ですからそう言って謝りました。
「後ろが続いていますから、トイレは早く済ませてください」
ひと休みしようと、用意していたライムをみんなに配りはじめたときはこう言われました。
「あ、そうなんですか? 今日は連休の初めですものね」と返事はしたものの、怒られている感じがしました。
その日、私たちを担当していただいたのはベテランのキャディーさんでした。コースの読みも素晴らしく、アドバイスも的確、必要であるクラブも声をかける前に用意してくれるほどのムダのない動きです。スキル、テクニックの部分は申し分ありません。
しかし正直なところ、楽しいゴルフではありませんでした。なぜなら、キャディーさんの言葉に棘があるように感じられたからです。言葉づかいは丁寧なのですが、優しさが感じられませんでした。また、態度もそっけなく、ハーフランドが終わったときも、矢継ぎ早に「次は一時間半後です。遅れないようにしてください」と言うだけで、いなくなってしまいました。
ここまでは何も言わなかった父ですが、ついには「午後はキャディーを変えてもらうよ」と言い出してしまったほどです。日ごろから寡黙で穏やかな父の言葉とは思えませんでしたが、私たちも賛成でした。
ゴルフ場側には迷惑をかけてしまいましたが、楽しむために来ている家族ゴルフです。真剣勝負で数字を競いに来たわけではありません。
午後から担当してくださったキャディーさんは愛想もよく、優しい方でした。
「○○様、お手数ですが、この二本のクラブを持っていただけますか」
「申し訳ありません。本日は大変混雑しております。恐れ入りますが、休憩は早めにお取りいただけますでしょうか。一気にがんばりましょう!」
同じことを伝えられていても、先程の方とはまったく印象が違います。おかげさまで後半のランドは楽しく過ごすことができました。
伝え方一つ、言葉のかけ方一つで、相手の気持ちに大きな影響を及ぼすということを肌で感じた一日でした。
あなたに悪気はなくても、人の受け取り方は千差万別です。ましてはビジネスではストレートな言い方には十分気をつける必要があります。
人にお願いをしたり、お詫びを言うとき、そして断るときなど、ストレートに伝えるのではなくても、まずはクッションになる言葉を相手に投げかけてから伝えると、表現が和らぎ、配慮しているということを相手も感じることができます。
この言葉は、「前置きの言葉」「クッション言葉」、あるいは一言添えるだけで魔法のように優しい言葉に変化するので、「マジックフレーズ」と言われています。代表的なフレーズには以下のようなものがあります。
「恐れ入りますが」「お手数ですが」「おさしつかえなければ」「失礼ですが」「いつもお世話になっております」「申し訳ありませんが」「よろしければ」「ご面倒ですが」「お言葉を返すようですが」「身にあまるお話ですが」「もうご存じだと思いますが」「お手すきでしたら」「夜分遅く恐れ入りますが」「あいにく」「せっかくですが」「お役に立てず申し訳ありません」「仰る通りですが」「ごもっともですが」。
これら以外にも、相手のお願いをするときに「〜してください」の命令形ではなく、「〜していただけますか?」の依頼形にしてみるのも効果があります。「恐れ入りますが、お待ちください」を「恐れ入りますが、お待ちいただけますでしょうか」と、語尾を依頼形にするだけで気づかいが伝わり、相手も気持ちよく動いてくれるはずです。
ほかにも、「それはできません」といった否定形の言葉づかいを「いたしかねます」と置き換えることで、表現を和らげることができます。これは「わからない」「知らない」「聞いていない」なども同様です。
さらに、「申し訳ございません。あいにくですが私どもではいたしかねますので、こちらの案でご検討いただけないでしょうか」といったように、単にNOと伝えるのではなく、代替案を提示するのもビジネスを成功させるには大事な要素です。
「〜は無理です」という言い回しも、「〜なら可能でございます」とポジティブに言い換えると相手の受ける印象がガラリと変わります。
いずれにせよ、このマジックフレーズを使うだけで、その言葉が持ち印象を大きく変えることができます。ビジネスを円滑に進めるためには、表現を和らげる話し方を身につけるのも効果的です。とくに話し初めと語尾を意識するだけで、相手は格段に心を許してくれるようになるでしょう。