第1141冊目  小泉進次郎の話す力 [単行本(ソフトカバー)] 佐藤綾子 (著)


小泉進次郎の話す力

小泉進次郎の話す力


ボーカル効果の天才


演説においては、プレゼンテーションの効果は言葉だけではどうにもなりません。言葉を載せる声が、言葉の効果を決めます。


日本の国会議員のなかには、淡々とモノトーンだったり小さな声だったり、逆に常にがなり立てる人が混在しています。


オバマの場合は、その声のボリューム、速度、イントネーションなどを統合した周辺言語(パラランゲージ)がすべて計算されて、独自の強いインパクトを演出していきます。


まず声の質においては、響きのよいバリトンの声質です。先にふれた中川秀直氏も美しいバリトンです。スピーチや演説は書いた言葉を見るのではなく、耳から聞くのです。


そのためには、力強い声と耳当たりのよさ、高低・速度・抑揚・間(ポーズ)がすべて総合されて、人々の耳に心地よく、かつ力強く聞こえるかどうかで、言葉が印象づけられるかどうかが決まっていきます。


オバマの就任演説の「声に関する要素(パラランゲージ)」だけに注目して分析すると、非常に優れた特徴がわかります。


私のオリジナルの表情分析シートは、0・1秒単位の「ASコーディングシート}として知られていますが、これに彼の言葉を記入し、その時のオバマの一分間におけるワード数を計ってみたら、大変なことがわかりました!


最初のスターティングの一分間のオバマのワード数は、たった七十七ワードで、これと対照的に、「未来の子供たちに、自分たちがこのように戦ってきたと言われるようにしよう」という最後の重要な呼びかけの時には、一分間のワード数はスタート時点の二・三倍の百七十八ワードにのぼり、ガンガンとたたみかけているのです!


声のピッチを次第に上げてたたみかける「クレッシェンド効果」がそこで出るのです。


重要な?responsibility(責任)?という言葉も、特別な強調の仕方で使われています。これより以前の彼のスピーチによくあった、?hope?や?change??dream?のような明るい希望的な言葉とはちがう、国民論にとった果たすべき宿題を申し渡しているこの思い言葉を、彼は殊に強く発音しているのです。


その時、彼の声は次第にクレッシェンドで大きくなり、しかも、?responsibility?の前でひと呼吸置き、その単語を際立たせています。