第2129冊目 小泉進次郎の話す力 佐藤綾子 (著)


小泉進次郎の話す力

小泉進次郎の話す力

  • アイコンタクトで引きつける


「見つめられているか、いないか」これは聞き手にとって大いに満足感を分けるポイントです。


ある時私は、「マツケンサンバ」で一世を風靡した松平健さんを取材したテレビ番組を見ました。キャーキャーと中年女性たちが囲んでいる時に、テレビインタビュアーが「なぜ松平さんんが好きなのですか」と聞いたら、五、六人の女性が一斉に「だって私のほうをよく見てくれているのですから」と答えたのを見て、「やっぱりね」と思ったものです。


全員が「自分を見ている」と答えているのは、実際にはありえないことなのですから。けれども、目の周辺の総称「眼輪筋」がよく動き、その人のほうをしっかりと向いているので、きっとそう錯覚したのでしょう。


相手の目と自分の目線が合う「アイコンタクト」は、見つめている時間の長さ、方向性、そして見つめている強さの三点でつくられます。


強さについては、目の上の「上眼瞼拳筋」の引き上げ方の強さによって決まるのですが、このアイコンタクトの使い方の天才が、オバマなのです。


次のページの表は、オバマの目の動きが確認できた八百六十四秒を分析対象としてつくった表です。これで見るとオバマ大統領は、並みいる聴衆によく視線をデリバリーしながら、しっかりとアイコンタクトを保ち、このアイコンタクトの秒数は非常に長かったことがわかります。


まばたき回数は全部の演説中三百九十四回だけ。一分間あたりにすれば二十回。これは日本人の平均をはるかに下回っています。アイコンタクトの一分間あたり三十二秒も、二者間の対話中の日本人のへまったく同じです。ということは、オバマ大統領は、多くの人に視線を配りながら、一人ひとりを見ているという感じを演出したとうことになります。


さらにビックリするのは「視線のデリバリー」です。センターから左へ視線を振ったのが六十二回、右に振ったのが六十四回です。つまり、自分の右と左を均等に見ているのです。そして、目がキョロキョロする「アンフォーカスト」の目つきは一度もありません!   


今回の民主党党首選でも、その後の国会答弁でも菅首相は目を伏せ気味にして、右へ左へと落ち着きなく視線を泳がせています。


この泳ぎ目をパフォーマンス学の学術用語で、「アンフォーカスト」と分類するのですが、オバマ大統領の「アンフォーカスト」はゼロ秒です。いつも意識的にどこかをしっかり見ているということになります。したがって、シェル・リーアンが二〇〇九年に、オバマ大統領に対して文章的な評論で書いていることは、まったく私のコーディングでしっかりと証明されたわけです。


「適度なアイコンタクトもまた彼の重要なツールである。ビル・クリントンもそうだったが、オバマは迷わず、ぶれないアイコンタクトをすることで知られている。これが聴衆一人一人とのつながりを構成し、彼らを活気づけ飽きさせない。」


オバマは視線使いでもまた天才なのです。実はこの視線使いのテクニックを現在受け継いでいるのは、まだ政治演説の経験の浅い若き小泉進次郎です。