第907冊目 心を上手に透視する方法 [単行本(ソフトカバー)]

トルステン・ハーフェナー (著), 福原美穂子 (翻訳)

心を上手に透視する方法

心を上手に透視する方法

ロバート・チャルディーニは、著書『影響力――確信の心理学』の中で、アメリカ在住のウェイター、ビンセントがこのテクニックを使ってチップの稼ぎを大幅に増やすことができた話を紹介している。

通常、アメリカのウェイターは、客にできるだけ高額のメニューを注文させようとする。彼らの賃金は、レストランから決まった額をもらうのではなく、客が支払う合計金額の何パーセントかをもらうことになっているからだ。つまり客の支払う額が高ければ高いほど、賃金も上がる。

しかしビンセントは、客に図々しく高額の料理を押しつけるのが嫌だった。それよりも彼は、成功に結びつくはるかに繊細な行動をとった。

注文をとるとき、彼は少し前かがみになりこう言ったのだ。

「本当のことを申しますと、お客様がお選びになったお料理は、いつもほどよい出来ではないのです。それよりも、こちらかこちらの料理をお勧めいたします」

彼が勧めた料理は、客が最初に選んだものより少し安かった。ビンセントは、自分の利益よりも客の利益を優先させたように見える。しかしまさにそのことで、彼は客の信頼を得て、たっぷりとチップを受け取った。

おまけに、料理に合うワインと一番おいしいデザートを勧めると、客はどれも注文した! もしかするとその客は、ビンセントが勧めなければ、デザートやワインをまったく注文しなかったかもしれない。

つまり、誰かを相手に何かを達成したいときには、まず先に相手の利益になることをこっそり伝えておくといい。「これから秘密を打ち明けますよ」と予告することは、まさしく同じ行為である。

これでどうすればいいかわかったと思う。でも、これは内緒にしておいてください……。