第898冊目 心を上手に透視する方法 [単行本(ソフトカバー)]

トルステン・ハーフェナー (著), 福原美穂子 (翻訳)

心を上手に透視する方法

心を上手に透視する方法

わざと「ひどい気分」の表情をすると、どうなるか?

この二人の研究者・エクマンとフリーセンはある日、逆もありうるのかどうかについて疑問をもった。つまり、表情が感情に影響を与えるかどうかという問題である。

すると画期的な結果が出た。表情も感情も影響するのだ! 思考と表情の関係は一方通行ではない。思考が身体の姿勢や動作に表れるのと同様、から仇の動きや姿勢が、思考や感情に影響する。

一つ例がある。ザミー・モルチョによる、口を開けたまま計算する実験を思えておいてだろうか。あごを下げていることが、計算をする妨げになった。エクマンは同様のアイデアを思いついた。

エクマンとフリーセンはちょうど、怒りや悲しみの表情の分析を行っていた。二人は一日中向かい合って座り、交代で怒った表情や悲しい表情をつくった。しばらくして彼らは、自分たちがどんどん悲観的で不機嫌になってきたことがはっきりわかり、仕事を終える時間にはいつも気分が悪くなっていた。

いったいなぜだろうか。これは二人の性格の問題ではない。二人は、ずっと互いに見せ合った表情のせいでそんな気分になるのではないかと疑問をもった。

こうして二人は、この仮定を体系的に追求した。そしてついに彼らは、実際に表情が自律神経の著しい変化に影響を及ぼすという結論に達した。

つまり、思考や感情が表情に表れるというだけではなっかたたのだ。逆もまたしかりである。表情によって、感情が呼び起こされる。そして顔面筋も、感情に影響する。

彼らの研究の結果はこうだ。

「私たちはひどい気分だ。この表情をすることで、私たちは自分で悲しみや苦しみを感じるようになった。眉を下げて上まぶたを持ち上げ、まぶたを閉じ、口をぎゅっと閉じたら、怒りの感情がわいてくる。脈拍は1分間に一二〇回になり、手のひらに汗をかき始める。顔面筋を動かすとき、身体のほかの部位のスイッチを切ることができない。ひどく不快だ」