第3966冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田 則夫 (著)

 

 

 

 

-職員に安心感を与えるような対応をする

 

管理監督者のポジションに就く上司が現場を訪ねてくると、職員は緊張する。上司のその意識がなくとも、部下として働く職員は「悪いところがないか監視・点検されているのではないか」という思いに駆られやすい。強い緊張感を抱かなくとも、何となく居心地の悪さを感じる人もいる。管理職員がどのような意図で来ているのかわからないと、職員は「何しに来たんだろうね」と揶揄し、不満感を露わにする。

 

現場に対する理解を深めるために、現場を訪問するのは絶対に必要なことだ。が、誤解を受けたり、迷惑がられたりする状況は避けなければならない。

 

誤解を受けないようにするためには、どうすればよいか。現場への訪問を歓迎してもらえるようにするためにはどうすればよいか。最も有効なのは、職員を大切にしているという姿勢を明確に示すことだ。職員が安心して、リーダー職員を迎え入れることができるよう、最大限の配慮することである。

 

留意すべきポイントはシンプルだ。現場を訪ねるときには、よき人間関係を築くための基本を忠実に守る。この点に尽きる。安心感を与える、表情、立ち居振る舞いを心がける。ちょっとした仕草、表情や言動から、優しさや思いやりが伝わるようにする。部下・後輩を大切にしている、という思いが伝わるよう心がける。これがキーポイントだ。

 

現場を訪ねたとき、実際に目にする職員の仕草、行動、表情などをプラスの視点でとらえるという姿勢も重要だ。明らかな権利侵害行為に対しては毅然たる態度を示すのは当然だが、何気ない形で職員が見せる表情、仕草、立ち居振る舞いなどはプラスの解釈をしながらみるという姿勢を貫くようにする。

 

例えば、ある職員が気が重そうな表情で働いているケースを考えてみよう。「職業人としての心構えができてない」と最初から否定的、あるいは、マイナスの視点で見てしまうと、本当に大切なメッセージが受け取られずに終わる可能性が高くなる。ひょっとすると、その職員が重大なストレスにさらされているのかもしれない。健康不安を抱えているのかもしれない。あるいは、ずっと、職場内で悩み事があったのだが、相談できる人がいない。それが深刻な不安心理に陥る原因になっていたのかもしれない。過去に職場内で何かを提案したのだが、頭ごなしに否定された。それがトラウマとなり、一見不機嫌そうに見える表情になっているケースもある。このような原因が特定できた場合は、不安感の解消に向けて全力でサポートするという姿勢を示す。

 

大事なことなので強調しておこう。他者が示す仕草、表情、立ち居振る舞いなどをマイナスの視点で解釈すると、誤った理解につながりやすいし、相手にもその思いが伝わりやすい。良好な人間関係を築く妨げとなり、職員の内なる思いが把握できなくなる。そうなると、職員に対して、適切なサポートができなくなるので、気をつけなければならない。