第3759冊目 介護リーダーの仕事と役割がわかる! 近藤崇之 (監修)

 

 

介護リーダーの仕事と役割がわかる!

 

-リーダーもスタッフも事実に着目する

 

 

リーダー自身が事実と私見を分けて考えたり、話したり、書いたりする習慣をつけ、スタッフにも同じような習慣をつけてもらう必要があります。

 

 

ここで例を挙げましょう。リーダーのところにスタッフがやってきて次のように言っています。

 

 

大変です。 Sさん(利用者)がベッドから転落していました

 

 

上の報告は事実のようですが、実は少し違います。「ベッドから転落していた」というのは、スタッフが直接にその場面を見たのでなければ、推測つまり私見です。ではここから事実だけを取り出すとどうなるでしょう。

 

 

14時に、Sさんはベッドで横になっていた

16時には、Sさんはベッドのそばの床に横たわっていた

 

 

これは事実です。そこから考えられることは、Sさんは転落したのかもしれないし、誰かに落とされたのかもしれません。ほかにも何か考えられることがあるかもしれません。いずれにしてもこの事実に着目し、転落した場合、落とされた場合、それ以外の場合に分けて、それぞれの問題の原因を究明し、対策を立てなければならないのです。

 

 

①利用者のQさんは嘘つきで嫌われています

②うちの施設はいつも人手不足だから、スタッフは大変です

③パートのSさんは、ご主人の転勤で引っ越すため、退職します

④利用者のEさんは両足が弱いので車いす移乗は難しいです

⑤スタッフのRさんは残業ばかりしています

 

 

この5つのうち事実は③だけです。それ以外の文章には私見が含まれています。私見の部分は①「嘘つきで嫌われている、②「いつも人手不足だからスタッフは大変」、④「車いす移乗は難しい」、⑤「残業ばかりしている」です。根拠が明確でなく、ほかの人に聞いたら、あるいはほかの人が実行したら、まったく別の答えになる可能性があるからです。②ならば人員の不足を人員換算で示す、⑤では月平均の残業時間を示すことで、事実を述べることができます。

 

 

リーダーは報告を受けたら、事実と私見を冷静に分けて考える習慣をつけましょう。「これはこうだったね」と要点を繰り返したり、「そのことは確認したの?」「なぜそう思うの?」などの質問をしたりするとよいでしょう。