第3416冊目90秒で好かれる技術 単行本(ソフトカバー) – 2011/8/16ニコラス・ブースマン (著), 中西 真雄美 (翻訳)

 

 

90秒で好かれる技術

90秒で好かれる技術

 

 

 

-相手と同じことをする

 

私がマルドゥーンと初めて会ってからまだ3日しか経っていなかった。けれど、この3日のあいだに、私はマルドゥーンが90秒でセールスチームをやる気にさせ、90秒で編集スタッフに戦略計画をたたき込み、90秒で売り込みに成功する姿を見ていた。

 

 

だが、オフィスへ戻るタクシーのなか、私は彼を生まれたときからずっと知っているかのように感じていた。その理由はマルドゥーンの2つめの教えだ。

 

 

「今どんな気分だね?」マルドゥーンが尋ねた。

 

 

「いい気分です」マルドゥーンは片方の眉をかすかに上げた。「いや、とってもいい気分です」

 

 

「わかってるよ」マルドゥーンは言葉を続けた。「なぜわかると思う?」

 

 

「私がにこにこしながらうなずいて、たくさんのことを教えてもらっているからでしょう。わかりきったことですよね」

 

 

「ああ、だがそれだけじゃないですよ。君の座り方を見てごらん」私は思わず視線を落とした。そのときの私は右肩をタクシーの側面にあずけて腕を組み、顎が左の鎖骨にくっつくようにして座っていた。

 

 

「次は私の座り方を見てごらん」そう言われるまで気づかなかったが、彼の言葉であらためて注意して見る戸、マルドゥーンは私とまったく同じ姿勢で座っていたのだ。まるで鏡を見ているかのようだった。

 

 

「人は誰かと親しくなるとき、どんなことをしているかわかるかい?」私はわからないというように首を振るだけで充分だと思った。すると、彼も同じことをしていた。マルドゥーンもわからないというように首を振ったのだ。

 

 

「互いに似た行動をとるんだ。同じ座り方をし、同じ話し方をする。今日、通販会社で客が首をかしげていたら、私も少し首をかしげた。相手が緊張している様子なら、私も緊張しているように見せた。リラックスしているときは、私もリラックスした。動作や態度、表情をその場に合わせた変えたんだ――すべてがうまくなじむようにね」

 

 

「カメレオンのように?」

 

 

「今も君に対して同じことをやっている――君はまったくそれに気づいていなかった。たとえ気づいていなくても、君は心地よさを感じ、リラックスできた」

 

 

「そうか! だから。あの社長と長年のつき合いのように見えたんですえね」私もようやく合点がいった。