第3131冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著),‎ マーヴィン カーリンズ (著),‎ 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • 陪審の心に響く尖塔のポーズ


さまざまな社会的環境で尖塔のポーズがもつ影響力を調べてみれば、ノンバーバル行動の威力を実証することができる。尖塔のポーズは、たとえば法廷で証言するときに役立ち、鑑定人の訓練ではこのポーズを使うよう推奨している。証言者は、要点を強調するため、または自分の言っていることに高い自信を示すために、尖塔のポーズをとるといい。そうすれば、ただ両手を膝に置いたり組み合わせたりしているときより、陪審員に心強い印象を与えることになる。面白いことに、検察官側の証人が証言している間に検察官が尖塔のポーズをしていると、証言の価値が高まる。弁護人が、その証人は証言に自信があるという印象をうけるからだ。証人が両手を組み合わせたり揉んだりしていると、それを見た陪審員は証人がビクビクしていると感じ傾向があり、残念ながら、偽っていると受け取ることも多い。もちろん正直な人も不正直な人もそのような行動をとるのだから、自動的にウソと結びつけてはいけない。それでも証言台に立つときには、尖塔のポーズをとるか、両手を組み合わせてしまわずに指を軽く曲げ、先端を合わせてカップを作るような形にしておくことをお勧めする。それらは、より信頼できる、自信のある、そして誠実な気持ちを印象づけることになる。


尖塔のポーズがもつ強力なノンバーバルの意味に気付いていない人では、ポーズがかなり長い間続くことがあり、特に快適な状況が続いていれば、その傾向が強まる。尖塔のポーズが手がかりになると気付いていない人でさせ、なかなかやめられない。その場合も大脳辺縁系が無意識のうちに反応していまうから、尖塔のポーズをとらずに済ませるのは難しい。ことに興奮していれば、自分の反応をいちいち振り返って制御するのを忘れているからだ。


周囲の状況は刻々と変化し、私たちの人やものに対する反応を変化させる。そんな場合には一瞬にして、大きな自信を表す尖塔のポーズが自信のない手のポーズに変わる。自信が揺らいだり心に疑いが迷い込んだりすれば、尖塔のポーズは手を組み合わせたり祈りのポーズになるだろう。ノンバーバル行動のこうした変化は瞬時に起こり、変化する周囲の出来事へのその時々の心の反応を、とても正確に表して明らかにする。(大きな自信を表す)尖塔のポーズから(自信のなさを表す)祈りのポーズへ、そしてまた(大きな自信を示す)尖塔のポーズへと変化し、その人の確信と疑いの浮き沈みを、そっくりそのまま表すこともある。


また、正しい尖塔のポーズや好ましい影響を与える手の置き方を、意識して利用することもできる。尖塔のポーズは、自信と落ち着さを強力に伝える力をもっているので、そんなノンバーバル・シグナルを出している人に異議を申し立てるのはなかなか難しい。だから尖塔のポーズを身につけておけば、実に便利に利用できることになる。講演者や販売担当員が言いたいことを強調するのに使えるほか、誰で大切なポイントを伝えようとするのに利用できる。就職の面接を受けているとき、会議でプレゼンテーションをしているとき、あるいは友だちと何かを議論しているとき、自分の手の動きに自信があふれているかどうかを考えてみよう。


専門家の会議では、女性がテーブルの下やとても低い位置で尖塔のポーズをして、せっかくもっている自信を無駄にしているのをよく見かける。落ち着き、能力、自信――ほとんどの人が、もっていることを知ってほしいと思っている性質――を相手に伝えられるこのポーズの威力を知って、もっと多くの女性が、テーブルの上で、このポーズを見せてほしいものだと思う。