第2288目 (文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 (サンマーク文庫) 三枝理枝子 (著)


(文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 (サンマーク文庫)

(文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 (サンマーク文庫)

  • すべては「次に使う人」のために


あなたは公の場でのふるまいをどれだけ意識しているでしょうか。


会社での公の場というと、共同で使用する会議室、休憩所、食堂、洗面所、トイレなどが思い浮かぶと思いますが、そういった場所を使った後の様子があなたの人間性を表します。


これはある金融機関の支店へ研修に行ったとい、部長職の方からうかがった話です。


その支店の社員食堂には片隅に洗面台が二つありました。あるとき、女性行員が食事前に手を洗おうと洗面台を使いました。部長はこの女性とはたびたび昼食の時間が重なり、よく見かけていたそうです。その日もいつものように、彼女は手を洗った後、洗面台の備えつけてある雑巾で自分の使った洗面台と隣の洗面台をさっと拭いて水滴を取りました。


部長はその姿に衝撃を受けたそうです。恥ずかしながら、今まで自分が使った後、隣の洗面台はおろそか自分で使った洗面台すらそのままにしていて、水滴を拭き取るという気づかいなど思いもしなかったと素直に仰いました。


隣の洗面台の汚れまでさっと拭いて立ち去る女性行員を見て、教えられたそうです。人の見ていないところでも他の人を思って動けること、やるべきことは人にほめられなくても進んでやる素晴らしさを。


次に使う人が気持ちよく使えるようにきれに使う人なのか、それとも自分さえ気持ちよく使えれば後はどうでもよい、と考える人なのか。


お手洗いのレベルを見ればその会社のレベルがわかるといわれるように、公の場の使い方であなたのレベルがわかってしまいます。ですから、階段にゴミが落ちていたら進んで拾うくらいの気持ちを持ちましょう。


CAはフライト中、トイレチェックと称して掃除とともにゴミ箱のゴミを集めたり、ベイスン(洗面ボウル)の水滴を拭き取ったりしています。これは、常にお客様に気持ちよく使っていただくための業務の一つですが、お客様によっては「お使いになったのかしら……」と思うほど、きれいに使っていただける方もいらっしゃいます。さり気のない行為から、その方の人格さえ感じることができます。


社会とは、公共の場でのふるまいによって成り立っています。


電車の床に座り込んでいる人は問題外だとしても、電車の中で何か食べているのはにおいを伴うので感じのいいものではありません。ホテルのロビー、レストランでの声高な笑い声、おしゃべりも不愉快に思われる方がいるでしょう。


そういったことを配慮する気持ち、周囲の人のへ気づかいを忘れないということです。人は一人で生きているのではないですから。

そして、縁の下の力持ちであるこの女性行員を来期から始まるプロジェクトのメンバーに推薦したそうです。