第2289目 (文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 (サンマーク文庫) 三枝理枝子 (著)


(文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 (サンマーク文庫)

(文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 (サンマーク文庫)

  • どんなに仲よくなれても「三脱の教え」を思い出そう


江戸のしぐさで「三脱の教え」とあるように、初めて会う人や知らない人との上手なつきあい方として、年齢、職業、地位を聞かないことが昔からいわれてきました。


ところが、最近では初対面でも馴れ馴れしい人がいるようです。あなたもついつい尋ねてしまい、後から考えると失礼だったと思い当たることがあるのではないでしょうか。


距離感を縮めようというお気持ちはわかりますが、プライベートまで話題にするのは不作法です。とくに女性には、「結婚していますか?」「おいくつですか?」「お子さんはいますか?」と聞かないほうがいいでしょう。男性には出身地、出身校などを出会ってすぐには聞かないほうがいいかもしれません。


これは転勤になり、新しい赴任地で上司と一緒にあいさつ回りをしていた男性の話です。


創業四〇年、地元に密着し、多角的な経営をなさっている会社に出向き、社長とその息子さんである副社長とお会いしたそうです。今まで彼がどこに配属されていたか、得意分野などの仕事の話に花を咲かせ、初対面にもかからわず大変盛り上がったようでした。


するとその勢いで、彼はさらにプライベートなことまで話しはじめました。子どもが二人いて、長男は今年無事に大学の付属中学校に入れたこと、長女はピアノが得意で、つい最近、発表会で活躍したことまで話してしまったそうです。


そして、「副社長、お子様は?」と尋ねたのです。同行した部長が「あ……」と思いましたが、後の祭り。副社長が困惑した顔つきになっていくのに気づきました。


「もういいです。よくわかったよ。ありがとう」


とうとう、社長からストップの声がかかりました。


「うちには孫がいなくてね。息子の連れ合いに病気があって……。子供の話はもうけっこうです」


沈鬱な空気が流れました。


翌日、「担当は別の方にお願いします」と連絡が入ったそうです。


話が盛り上がったため、ついプライベートにまで踏みこんでしまったがために、彼はこのようなミスを犯してしまったのです。


質問されても相手には答えない権利があります。


お互いが不快な気持ちにならないように、初対面のときは、たとえお酒の席であってもプライベートな話は最小限に控えるべきです。相手が話したがっている様子であれば、控えめに質問をしながら、気持ちよく話してもらうのはいいでしょう。


いずれにせよ、「口は禍のもと」とまではいいませんが、ビジネスでは初対面で聞いていいことと悪いことがある、という意識を持ってください。