第2085冊目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)


長年連れ添った夫婦の顔が似てくる例を、あなたも見たことがあるかもしれない。長い時間をともに過ごすと、互いのボディランゲージを真似るようになることは、研究から十分に裏づけられている。ここで言うボディランゲージには、顔の表情も含まれるだろう。顔の同じ筋肉を繰り返し使っていると、顔の造作が似てくるのかもしれない。


このように他人のボディランゲージを真似る傾向は「大脳辺縁系共鳴」と呼ばれるもので、脳の回路に組み込まれている。大脳辺縁系共鳴は「オシレーター」と呼ばれる特定のニューロンの反応による。このニューロンは、体の動き方と動くタイミングを調整して連動させる。ダニエル・ゴールマンはハーバード・ビジネス・レビュー誌で、2人の熟練したチェリストが合奏するときの生理的な変化を解説している。2人の奏でる音が調和するだけでなく、オシレーターの働きで、右脳の働きが左脳に比べてより緊密に調和していた。


他人のボディランゲージを真似ると、信頼と親密さを築きやすい。このテクニックは「ミラーリング」「ミミッキング」と呼ばれ、カリスマのある多くの人が本能的に行っていることを、意識的に行うというものだ。


ボディランゲージを意識的に真似るする際は、信頼と好意の本能が働く。したがって、人の心を開かせるテクニックとしても役に立つ。ある元政治ジャーナリストは、インタビュー取材ではミラーリングがとても効果的だったと語る。「相手が共有しようという気持ちになり」、本能的にもっと多くの情報を提供してくれるのだ。


世界各地の研究によれば、ボディランゲージを真似るミラーリングは、相手に自分が落としたものを拾わせたり、自分の商品を買わせたり、自分に有利な契約を結んだりするように導くこともできる。自分をより魅力的だと思わせることもできるという。


次に誰かと話す機会に、相手にジェスチャーや体勢をミラーリングしてみよう。頭の高さ、足の開き方、体重移動のタイミング。相手が左手を動かしたら、あなたは右手を動かす。声の速さやピッチ、イントネーションも真似する。


人は誰かとやりとりをしている最中も自分のことに集中しているので、大げさにやりすぎなければ、ミラーリングをしていることは基本的に気づかれないだろう。とはいえ、気づかれにくくするコツがいくつかある。

  • 真似するものを選ぶ 自分にとって自然に思えるものだけを真似る。たとえば、性別に特有のしぐさだけを選ぶ。
  • 大きさを変える 相手が大きなしぐさをしたら、小さなしぐさで真似る。
  • 時間差をつける 数秒遅れて真似をする。