第2068冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著), マーヴィン カーリンズ (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • 顔の表情による不同意の表すサイン


不同意を表すサインは世界中でさまざまに異なり、個々の文化の社会規範を反映している。私はロシアの美術館で、通路を歩きながら口笛を吹き、まわりの人々から冷たい視線を浴びせられたことがある。ロシアでは室内で口笛を吹くなどもってのほからしい。ウルグアイの首都モンテビデオでは、私たちのグループは横目でにらまれた末、軽蔑したように顔をそむけられてしまった。話し声が大きすぎて、地元の人たちはその騒々しさが我慢できなかったようだ。米国では広くて多様な人々の集まりだから、不同意の表情や地方によってさまざまに異なっている。中西部で目にするものとニューイングランドやニューヨークで出会うものは違う。


不同意の気持ちが最もよく現れるのは顔で、それは私たちが物心ついてすぐに両親や兄弟から学ぶメッセージだ。子どもの世話をする人たちは、子どもな何か悪いことをしたり間違った行動をとったりすると、「いつもの顔」をして知らせる。私の父はとても冷静な人で、まさにピッタリの「目つき」をした。父はただ、いかめしい視線を浴びせるだけでよかった。私の友達までもが怖がる目つきだった。言葉で叱ったことは一度もなく、ただ疑う余地もない視線を向ければ、ことがすんだ。


普通、私たちは不同意の表すサインを理解するのがとても得意だから、ほんのわずかなものでも感じることができる。国や地域の不文律やきまりを学ぶには、そうしたきまりを破ったときに周囲から寄せられる、非難の気持ちを察するのが大切だ。そうしたシグナルがあるから、私たちは自分が不作法なことをしていると気付く。ただし、不同意や非難をむやみに、不適当な方法で伝えるのも、同じように不作法になる。米国でよく見せられる不同意のノンバーバルに、ジロリとにらみつけるものがある。これは軽蔑のサインであり、特に目下の人や部下、子どもが使うのは、許されるものではない。


嫌悪感や不同意の気持ちを示す表情はとても正直で、頭の中の状態がそのまま反映される。嫌悪感が一番に顔に出てしまうのは、何といっても何百万年にももわたって適応してきた体の構造の一部になっているからで、腐った食べ物など、体の害になるものを拒絶する反応と同じものだ。こうした顔の表情は、微妙なものからあからさまなものまで幅広いが――不快または嬉しくない情報に出会ったにせよ、まずい食べ物を食べたによせ――脳から見ればすべて同じ気持ちを表している――「私はこれが好きじゃないから、どこか見えないところに持って行って!」しかめ面やいやな顔がどんなにわずかであっても、それらは辺縁系によってコントロールされているので、その表情を正確に理解できると自信をもっていい。