第3679冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田則夫(著)

 

 

 

福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか

福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか

 

 

 

 

  • 意気込んで提案してきた人の出鼻をくじくような発言、姿勢は示さない。
  • 提案や申し入れに対しては「ああ、面白そうですね。ぜひ聞かせてください」と前向きな発言で対応する。
  • 過去に不十分な提案を繰り返した部下・後輩であっても、「話を聞きますよ」という姿勢で相対することを大原則とする。「またか!」といった否定的な態度や姿勢は決して示さない。
  • 部下・後輩からの提案内容に不十分な部分があったとしても、いきなり問題点の指摘から入らない。「全体の趣旨はとてもいいと思いますよ」とポジティブな評価を加えたうえで、「ただ一点、気になるところがあるので教えてください」とう流れで疑問や気になった部分の指摘をする。こうした指摘の仕方をすれば、相手に「受け止めてもらえた」「アドバイスをいただけた」という印象を与えられるようになる。

 

  • 部下からあがってくる報告については、まずその内容の把握に力を注ぐ。内容の部分に対して適切な反応やアドバイスをする。
  • 口頭あるいは文書による報告について、表現上のミスを指摘する場合は、報告してくれたことに感謝の気持ちを述べたうえで、「『頭痛が痛い』という表現は意味が重なっている言葉を続ける言い方であまり望ましくないんだって。安全なのは、『頭痛がする』っていう言い方。私もよく間違えてしまうことがあるんだけどね」などといった具合に、間違えるのはあなただけではないという点を伝え、本人がミスを指摘されても、ショックが可能な限り小さくなるような伝え方をする。
  • 何か正しいことを伝える際に、「これって常識だよ」「普通みんなわかっているんだけどね」「あれ、こんなことをわからないの」などといった言い方は決してしない。
  • 自分の常識だけで物事でとらえない。どんなに時代が変わっても変わらないものもあれば、大きく変わることもある。日本語表現も例外ではない。かつては誤った日本語表現として批判されていたものが、一〇年後には、〝全然OK〟な表現とみなされるようになる場合もある。

 

  • 大切なのは、自分のなかの価値観や判断基準だけで、物事をみえようとしないこと。柔軟な態度で物事をみる姿勢をもつことが必要である。ある時代や個人によっては誤解される可能性がある日本語表現の場合は、「その表現は年配の人が今も抵抗感を抱くことがあるので、気をつけてください」と〝大人〟の姿勢でアドバイスする。こうしたソフトな対応で、「その表現はやめたほうがいい」という話し手の意図は相手に十分に伝わる。抵抗感なく、「あらなめなければならない」という気持ちをもってもらえるようになる。

第3678冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田則夫(著)

 

 

 

福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか

福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか

 

 

 

-現場をサポートするという明確な姿勢を示す

 

 

リーダーの重要な使命は、やり遂げることである。なすべきことを適切な手順と方法で、着実に成し遂げていく。部下や後輩の力だけでは解決できないことを、適切な方法でサポートし、解決に導いていく。その重要な役割をもっているのがリーダーである。

 

 

リーダーとして、現場に目が行き届くよう心がけるのは、何が起こっているか、どのような成果を現場は収めているか、どのような課題に直面しているか、などといった点を把握するためだけではない。把握後に、責任ある立場として、行動を起こすためである。うまくいっている部分については職員の働きを十分にねぎらい、さらなる磨きをかけ、より高い実績があげられるよう下支えしていく。

 

 

問題や課題がある場合、原因を精査したうえで、改善策を講じ、解決に導いていく。悩みを抱えている職員がいる場合も、同様だ。悩みをもたらす要因を把握したうえで、適切なサポート策を講じ、悩みや苦しみから職員を解放するという実績を示すことが求められているのである。

第3677冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田則夫(著)

 

 

 

福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか

福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか

 

 

 

-悪いところ探しにならないようにする

 

 

現場を訪れるのは、問題点だけを探しに行くのではない。うまくいっているところと、修正が必要なところを見きわめるために行くのだ。うまくいっていないところについては、その原因を精査し、うまくいくようアドバイスするために現場を訪れるのである。これが管理監督者のポジションにある職員が現場に足を運ぶ大きな目的の一つだ。

 

 

さらにもう一点、決して見逃してはいけない重要な目的がある。それは、働く人の安心感をもたらすためだ。自分たちは上司から守られている。上司から認められている。それを実感してもらえるようにすることも、現場に顔を出す大きな目的である。もちろん、現場を訪れ、改善すべき点、見直すべき点がある場合は、それを見逃さずに把握する責任があるのはいうまでもない。が、それが目的であるかのような態度をとると、現場の職員は何が起こっているか、どんなサポートを必要としているか、把握することが困難になる。

第3676冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田則夫(著)

 

 

福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか

福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか

 

 

 

-職員に安心感を与えるような対応をする

 

 

管理監督者のポジションに就く上司が現場を訪ねてくると、職員は緊張する。上司にその意識がなくとも、部下として働く職員は「悪いところがないか監視。点検されているのではないか」という思いに駆られやすい。強い緊張感は抱かなくとも、何となく居心地の悪さを感じる人もいる。管理職員がどのような意図で来ているのかわからないと、職員は「何しに来たんだろうね」と揶揄し、不満感を露わにする。

 

 

現場に対する理解を深めるために、現場を訪問するのは絶対に必要なことだ。が、誤解を受けたり、迷惑がられたりする状況は避けなければならない。

 

 

誤解を受けないようにするためには、どうすればよいか。現場への訪問を歓迎してもらえるようにするためにはどうすればよいか。最も有効なのは、職員を大切にしているという姿勢を明確に示すことだ。職員が安心して、リーダー職員を迎え入れることができるよう、最大限の配慮をすることである。

 

 

留意すべきポイントはシンプルだ。現場を訪ねるときには、よき人間関係を築くための基本を忠実に守る。この点に尽きる。安心感を与える、表情、立ち居振る舞いを心がける。ちょっとした仕草、表情や言動から、優しさや思いやりが伝わるようにする。部下・後輩を大切にしている、という思いが伝えるよう

心がける。これがキーポイントだ。

 

 

現場を訪ねたとき、実際に目にする職員の仕草、行動、表情などをプラスの視点でとらえるという視点も重要だ。明らかな権利侵害行為に対して毅然たえる態度を示すのは当然だが、何気ない形で職員が見せる表情、仕草、立ち居振る舞いなどはプラスの解釈をしながらみるという姿勢を貫くようにする。

 

 

第3676冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田則夫(著)

 

 

 

福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか

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-利用者と馴染みの関係を作る

 

 

現場に顔を出す際に心がけなければならないのは、利用者とのふれあいだ。また、コミュニケーションの機会を可能な限り数多くもつことである。利用者とふれあう機会をもつと、どのような思いでサービスを利用しているか、どのようなことに満足しているか、どのような不安を思っているか、一人ひとりが抱いている心情がより的確に理解できるようになる。

 

 

利用者一人ひとりの思いに根ざした組織運営を考えることにもつながるし、職員へのアドバイスにもつながる。利用者と馴染みの関係をもっている上司の声は職員の心にも届きやすくなる。利用者を大切にしている姿を目の当たりにしているので、自分たちとは、異なる世界に住み、現状のことがわからずに、組織運営に当たっているという誤解を生み出す恐れがなくなる。職階や立場は異なっていたとしても、現状を共有するいい意味での「仲間意識」が醸成しやすくなる。

第3676冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田則夫(著)

 

 

 

福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか

福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか

 

 

 

-定期的に現場に顔を出す

 

 

もしあなたが管理監督者であり、直接支援・介護に携わる職員とは離れるところで仕事をする立場であれば、可能な限り、現場を訪れる時間を作るよう努力する。事務所によっては、他の部門が同じ建物にない場合もある。その場合も、可能な限り訪ねる努力を怠らないようにして、状況共有、意思疎通に努めなければならない。

 

定期的に訪ね、自分の目でその空間に入ることによって、何が起こっているか、つかみやすくなる。ただし、問題はどれくらい頻繁に顔を出すか、ではない。漫然と回数を増やすだけでは、現場のリアリティーは把握できない。大切なのは、顔を出すときにはいつも謙虚に「現場に学ぶ」という姿勢をもって訪ねることだ。現場を支える。利用者を支える。そして、職員を全力で支える。その姿勢が伝わるような訪ね方をすることが重要である。

第3675冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田則夫(著)

 

 

福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか

福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか

 

 

 

-記録が変わると業務実践が変わる

 

 

管理監督者であるリーダー職員に、現場の実態が伝わらない大きな原因は、記録の書き方の不十分さにある。記録は、現場と管理監督部門との情報共有手段であるはずなのに、書き方が不十分なために、記録の読み手に伝わらずに終わるという例は少なくない。

 

この状況を打破するには、記録の書き方の見直しが必要だ。何をどう変えるのか。ポイントは、記録者の主観中心型の記録から、客観的事実中心型の記録への変更である。

 

 

本来、社会福祉現場における記録の基本は、客観的な事実の記載である。「何があったか」を記録の中心に据え、必要に応じて、記録者の考えやコメントなどといった主観的記述を加えていく。

 

 

事実を書いた後に、この事実に関して、「私はこう考えた」「今後、こういったことが必要だと思われる」など、考察あるいはコメントを記していく。