第3896冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田 則夫 (著)

 

 

 

面従腹背部下

 

面従腹背部下とは、表向きは相手の言うことに従う姿勢を示しているが、心の中では「従わない」という思いを強く抱いている状態を指す。表面上は「信頼しています」との姿を示しているが、裏の顔は全く別人。「あなたなんか嫌い。少しも信用していない」という思いを抱いている。意見、提案、指示については、「従う」態度を示すが、それは表向きだけ。心の中では、「ろくでもない意見」「そんな提案断固反対」「誰がそんな指示従うか」という思いを抱いている。

 

表舞台ではサポーターであり、従順なフォロワーだが、裏舞台では、トレーター(裏切り者)といえるような態度を示す。表舞台ではあまりにもよい表情を見せるので、裏切りといえるような言動に気づくまでは時間がかかる。気づいたとしても、確証を得るのは至難の業。あくまでも裏舞台での言動なので、現場を押さえることは極めて難しい。

 

しかし、解決の糸口はある。明確な指示や提案に対して、「はい」と言ったのに、行動を起こさずに終わった点は明らかにできる。この部分を突破口にして、行動をあらためるよう働きかける。「はい」と言ったことは必ずやってもらう。表舞台で面と向かって従うといったことは、必ずその通りにしてもらう。そんなプレッシャーを相手にかけることができる。

 

続いて、取り組んでほしいのは、自分の行動は、相手を面従腹背の境地に追い込んでしまっていないか、点検し振り返る作業だ。原因が、リーダーである自分にある可能性があるからだ。意図的でないとしても、相手を力で従わせるような言動を示していた。従わない、と相手に強く思わせるような何かを示していた。リーダーに疑義を唱えると、裏切り者扱いするような態度を示していた。こうした態度が部下を面従腹背の状況に追い込んだ可能性がある。

 

だからこそ、果たして自分が示した言動や態度のなかに問題がなかったか、自己チェックする取り組みが絶対に必要になる。次に示す問いを自分自身に投げかけ、精査する取り組みに着手しよう。

 

自分の考えを押しつけるような言動を示していないか。

自分とは異なる意見を許さないという姿勢を示していないか。

自分の提案や考えに対して、質問を許さないという姿勢を示していないか。

 

これらの三つの問いのなかに、万が一、「はい」と答えるものあるとすれば、すぐに改善に向けて行動を起こす。もし、リーダーとして不適切、不十分なところがあることに気づいた場合、改善に向けて確かな一歩を踏み出す。こうした姿勢を示すことが求められているのだ。